歯周病にまつわる様々な病気・症状~腎臓病~

2021.12.01

1.腎臓病とは

腎臓は、腰のあたりに位置するソラマメのような形の150gくらいの臓器で、左右に1つずつあります。
腎臓は、毎日血液をろ過して、身体のなかの不要な水分や老廃物を尿として体外に排出する役割を持つ大切な臓器です。それだけでなく、尿を作るなかで、血圧の調整、ナトリウムやカリウム、カルシウムなどのミネラルバランスの維持や、酸性とアルカリ性のバランス調整を行い、さらに赤血球をつくるホルモンの分泌、健康な骨のために重要なビタミンDの活性化を行うなど、多くのはたらきをしています。

そのような大切な腎臓のはたらきが、健康な人の60%以下に低下するか、あるいは、尿中にタンパク質が漏れ出るなど、なんらかの腎臓の異常が3か月以上続くと、「慢性腎臓病」と診断されます。

慢性腎臓病の患者さんは、2011年時点で日本国内に1,330万人、成人の約8人に1人いるといわれています。また、2017年時点での透析患者数は約33.5万人で、現在も増加の一途をたどっています。
身近にも透析治療を受けている方がいらっしゃるのではないでしょうか。

2.歯周病が慢性腎臓病の原因の一部かもしれない!


慢性腎臓病が進行すると、透析や移植が必要になってしまいます。
そんな大変な慢性腎臓病の原因はなんでしょうか?
代表的な原因としては、糖尿病、加齢、喫煙で、他に高血圧、糸球体腎炎、自己免疫疾患なども挙げられていますが、原因がよくわからないことも多いのです。
しかし、一部は「歯周病が関係している」かもしれないと言われるようになりました。
歯周病の方は、血中に炎症物質が増加しています。つまり、全身が軽い炎症状態になっていて、歯周病が改善されない限り長時間その状態が継続してしまいます。その状態が腎臓にも悪影響を及ぼすのではないかと考えられるようになってきたのです。

3.歯周病と腎臓病の関係

今までも、歯周病の炎症が重症化すると腎機能が低下することが分かっていました。
歯周病と慢性腎臓病を併発している患者さんは、生存率が低下することも判明しています。
歯周病の炎症が10%増加すると、腎機能が3%低下するそうです。
腎機能が3%低下することにより、5年で腎不全となるリスクが32〜34%増加する可能性があります。
さらに、腎機能が10%低下すると、歯周病の炎症が25%増加することも判明しました。

また、歯周病と慢性腎臓病が双方向的に影響を及ぼし合うという仕組みには、活性酸素と抗酸化防御機構のバランスの崩れが関与していることも分かりました。
歯周病と慢性腎臓病が双方向的に影響を及ぼし合うことと、その仕組みが解明される論文も発表されており、少しずつ歯周病と腎臓病の関係がより明らかになってきています。

歯周病の炎症をわずかに減少させるだけで、腎機能にとって良い影響を与えることも示されました。
日常の口腔清掃を通じて、歯周病の炎症を10%減少させるだけで、健康に良い効果があります。
慢性腎臓病の患者と歯周病患者が常に一致するわけではありませんが、透析患者さんの歯周病や口腔内の状態が良好でない傾向が高いということを指摘する医師も多いようです。

歯周病予防は、お口だけでなく全身の病気の予防にもなりますので、ぜひ、適切な歯磨きをし、歯科医師の定期検診を受けて、歯周病予防に取り組みましょう!