デンタルケア用品の選び方

口内環境は、人によってさまざまです。
丈夫な歯と健康な口内環境を保つためにも、歯みがき剤や歯ブラシなど、オーラルケア用品の選び方は、お口の状態に合ったものを選ぶことが大切です。

むし歯や歯周病など、歯や歯茎の状態が違えば、お手入れの方法も異なります。
最近は歯みがき剤や歯ブラシの種類も豊富に。
正しいデンタルケア用品の選び方や使い方を理解し、症状に合ったものを使うよう心がけましょう。
ここでは、ケア用品の特徴によってどんな人に合っているか、どんな使い分けができるかをご紹介していきます。

デンタルケア用品

1.歯ブラシ

歯ブラシにはヘッドの大きさや毛の硬さ、柄の形などなど、その用途によって様々なタイプがあります。
市販されている種類も実に豊富で、種類が多い分どれを選んだらいいのか迷ってしまいますよね。
選ぶ際には年齢、歯、お口の状態に合ったものを選びましょう。
乳歯期用、仕上げみがき用、子供用、大人用など年齢や用途にあったもの、また歯、お口のサイズに合ったもの、持ちやすいグリップのもの、さらには歯ぐきを傷つけないための毛の種類を選んでください。
「歯や歯茎を傷つけない」「歯や歯の周りの歯垢がよく取れる」「歯茎をマッサージしてくれる」のが良い歯ブラシです!
あなたは今使っているもので大丈夫ですか?

以下で、詳細をご紹介していきます。

歯ブラシの選び方

1-1.毛の硬さの選び方

同じブランドや製品でも歯ブラシの硬さはさまざまですが、一般的には「かため」「ふつう」「やわらかめ」の3種類があります。
歯茎の健康状態によってピッタリの硬さは異なるため、自分に合ったものを選ぶことが大切です。

歯垢を落とすことだけを考えれば、「かため」>「普通」>「やわらかめ」の順で落としやすくなります。

ただ、毛の硬さが硬ければ硬いほど歯や歯茎がすり減りやすくなるので、「かため」を選ぶと歯垢が落としやすくなる分、歯や歯茎がすり減ってしまうことも。
1度削られてしまった歯や歯茎を再生することは難しいので、歯磨きをするときはゴシゴシ擦りすぎず、ご自分の力加減に合わせて毛の硬さを調節するといいでしょう。

 かため

普段の磨き方が弱い人、歯肉が丈夫で歯磨きの際に出血しない人におすすめです。

 ふつう

歯垢を落とすのに適度な硬さ。
歯・歯肉が健康、歯肉がまったく下がっていない人におすすめです。

 やわらかめ

歯肉を傷つけにくい硬さ。歯茎が弱い、出血しやすい、歯磨きの時間が長い人におすすめです。

1-2.毛先の選び方

市販の歯ブラシを選ぶ際、毛の硬さに加え、毛先の形状もポイントのひとつです。
横から見ると形状の違いがわかりやすく、主に毛先が平らなフラットカット型と、ギザギザしている山切りカット型があります。

一般的には、毛先が平らになっているフラットカット型がおすすめです。
山切りカットのように毛先の切り口がギザギザになっているものは、しっかりと歯に当たらず歯垢が除去しづらいのですが、毛先が平らになっていると圧力が均等にかかり、きちんと先端を歯に当てて磨くことができます。

毛先の太さは、太めの方が硬くなってしまったプラークなどを除去するのには向いていますが、特に歯周ポケットのケアを念入りにしたいという方には、細めのタイプをおすすめします。
細めの毛先が歯周ポケットの間に入りやすく、また、コシの弱い極細の毛先の方が必要以上に歯肉を擦って傷つける心配がありません。

フラットカット型

一般的な形で全体磨きに適しています。

山切りカット型

商品によって異なるものの、多くが歯周ポケットや歯の隙間等、細かい部分の汚れ除去を目的に設計されています。

歯ブラシの毛先のタイプ

1-3.柄の形(持ち手)の選び方

一般的には、柄の形はストレートで突起のないものがおすすめです。
ただ、奥歯などの細かい部分が磨きやすいように柄が曲がっているものもあります。
個人の好みにもよりますが、持ってみて余計な力が入らず、手にフィットするものを選ぶのが一番です。
デザインよりも持ちやすさを重視して選ぶことが重要なので、どんな角度でも持ちやすく、しっかりと力の入るものを選びましょう。

1-4.ヘッドの選び方

ヘッドとは、歯ブラシの先端の毛がついている部分です。
一般的に口に合う適正サイズとされているのは、縦が植毛3列、横が2~2.5cmくらのもので、上の前歯2本分の幅が目安です。
しかし、赤ちゃんや高齢者など、使う方の年齢や口のサイズによっても合うヘッドの大きさは異なります。
ヘッドが大き過ぎると奥歯や細かい部分にヘッドが届かず、磨き残しができやすくなります。
ただ、ヘッドが小さい歯ブラシは細かい部分まで磨ける一方、磨くのに時間がかかります。
ヘッドが大きく幅が広いものは歯との接地面積が広いため、全体を効率よく磨くことができます。
また、小さいヘッドの歯ブラシだと扱いにくいというご年配の方には、大きめのヘッドの歯ブラシが向いてます。

全体磨きには自分に合った基本サイズ、奥歯には小さめヘッドと使い分けると、磨き残しを減らすことができます。

1-5.毛の材質の選び方

一般的に多く販売されているのは透明なナイロン素材です。
より良いものを使いたいという方には、ナイロン素材よりも耐久力のあるPBT毛材(ポリブチレンテレフタート)という素材のものもあります。

歯ブラシの毛には動物(馬・豚)の毛のものもありますが、動物の毛はナイロン素材に比べてコシが無いため、歯垢が落としにくいという欠点があります。また、たんぱく質でできているため、口腔内細菌が付着しやすく、不潔になりやすいのも特徴です。
しかし動物の毛は復元力が強く、ナイロン素材のように、使っているうちうに広がってしまうという欠点が少なく、長持ちします。また非常に柔らかいので、歯茎や歯を傷つけにくくほとんど負担がかかりません。そのためつい強く磨いてしまう人、歯茎が弱っていてあまり力を入れすぎた磨き方ができない人に向いている歯ブラシです。

最近では歯を白くしたい人向けに、ステインを効率よく落とすことのできるゴム製の美白歯ブラシもあります。

2.デンタルフロス

虫歯や歯周病を予防するために、毎食後歯磨きをする方もいますが、どんなに正しくブラッシングしたとしても、歯ブラシだけで落とせる歯垢は6~7割と言われています。
歯の表面の汚れは落とせても、歯間や歯肉縁下に食べかすが詰まって歯垢になってしまう場合があるからです。
歯間は歯ブラシが入らない場合が多くあり、食べかすが詰まりやすくなっています。
食べかすが詰まると歯垢になり、虫歯や口臭の原因となったり歯肉炎を起こす場合があります。
そのようにならないために、しっかり掃除をしなければなりません。

そこで使いたいのが「デンタルフロス」。
デンタルフロスは、弾力性のある細い繊維の糸状の束で、歯ブラシだけでは落としきれない、歯の側面についた歯垢や、歯ブラシの毛先が届きにくい歯と歯の間に付着した歯垢や食べかすを絡め取り、きれいに取り除いてくれます。

また、歯ブラシでは磨きにくいインプラントの横やブリッジの底部、歯列矯正のワイヤーの下も掃除ができるため、虫歯予防に効果的。虫歯になりやすいと感じている人には特にオススメです。

このように歯間の掃除にとても便利なデンタルフロスですが、さまざまな種類があり、人によって合うものもあれば使いにくいものもあります。
選び方を間違えてしまうと使いづらくて長続きしなかったり、歯肉に負担をかけてしまう場合もあります。そのため、お口の健康を保つためにはただ掃除をするだけでなく、自分に合った道具を選んで適切な掃除をすることが必要です。
どのようなタイプを選ぶと効果的に掃除ができるのか、ご紹介いたします。

デンタルフロス

2-1.形

デンタルフロスには取っ手がついたホルダータイプと糸のみの糸巻きタイプがあります。

ホルダータイプ

持ち手の取っ手が付いているタイプのことです。
操作がしやすいため、デンタルフロスに慣れていない方や初心者におすすめです。

初めての方の場合はどれくらいの力で歯間に入れればいいのか、奥歯にどうやって入れたらいいかわからなかったりしますが、取っ手がついてれば奥にも入れやすく、掃除もしやすいので初めてでもしっかり使えます。 糸巻きタイプと違い、糸を切る作業が不要なので習慣化されやすいです。

形はF字型とY字型の2種類あります。
〇F字型
市販で手に入りやすい使い捨てタイプがあり、コンパクトなので使いやすいというメリットがあります。
また前歯をフロッシングしやすく作られています。

〇Y字型
奥歯をフロッシングしやすく作られており、奥歯の歯間に入れやすいので、奥歯が気になる方や初めての方におすすめです。

ロールタイプ

ロールタイプは取っ手のない糸だけのタイプで、デンタルフロスに慣れている方向けです。
こちらは必要な長さを切り取って、指に巻きつけます。口の中に指を入れることになるので、初めての方はなかなかできない場合がありますが、ホルダータイプと比べて、1回当たりに掛かる費用が安く済ませられます。デンタルフロスに慣れている方には、糸巻きタイプが経済的でオススメです。

2-2.糸の素材

ロールタイプには糸の種類があり、ワックス、ノンワックス、エクスバンドの3種類から選ぶことができ、個人の状態に合わせて使うことができるのも、糸巻きタイプのメリットです。

ワックスは滑り込みやすいので歯間に入りやすく、ロールタイプが初めてという方におすすめです。

慣れている方に人気なのがノンワックスです。
糸がほつれやすいのですが、その部分で歯垢を取りやすいという特徴があります。
エクスバンドは水や摩擦でスポンジ状に広がるので、汚れを取りやすい反面、動かしにくくなる可能性があります。
いろいろ使ってみて好みの使い心地のものを見つけるといいでしょう。

最も汚れが取れるのが、エクスバンドタイプです。
唾液や摩擦でスポンジのように膨らみます。
ただし、糸が太いため、歯間が狭いところには入らない場合があります。
上手く入らない場合は無理せずに使うのをやめて、自分にあった太さのデンタルフロスを使いましょう。

初心者にはホルダータイプが使いやすいので、おすすめです。

使い慣れた方には糸巻きタイプがおすすめです。

糸巻きタイプは、ワックスから始め、慣れてきたらノンワックス、エクスバンドに移行していきましょう。

歯間ブラシは合わない人もいるので、使う前に歯医者さんに診てもらいましょう。

3.歯みがき剤

歯磨き剤は毎日の習慣である歯磨きに欠かせない存在です。
それゆえその種類も多く、どれを選べばよいか迷ってしまいますよね。
歯磨き剤には虫歯を予防するもの、歯周病予防を目的とするもの、ホワイトニングを目的とするもの、知覚過敏対策のものなどさまざまな用途とタイプがあり、歯磨きを効果的に行うためには目的、お口の健康状態自分に合ったものを使用することが大切。
効果の違いを知っておくと、自分に合ったものを選びやすくなります。
そこで虫歯や歯周病などの正しい予防にも役立つ、歯磨き剤の選び方のポイントをご紹介します。

3-1.使用目的

〇虫歯予防
歯垢除去・付着予防が主目的です。
歯には「プラーク」と呼ばれる歯垢があり、その中に付いている多くの虫歯菌が酸を出して歯を溶かしていきます。
これが虫歯の原因です。
虫歯を予防するには、虫歯対策に効果的な歯磨き粉を使い、歯ブラシでプラークを取り除くことが大切。
虫歯予防を目的とするものには、一般的にプラークの働きを抑える、歯を強くする等の効果があるフッ素が配合されているタイプが多いのが特徴です。

〇歯周病対策・歯茎ケア
歯周病は発症率が高い病気で、歯の周りにある歯肉などの組織の炎症が原因のひとつ。
そのため歯周病予防を目的とした歯磨き剤には歯茎の活性化、殺菌、炎症抑制等の薬用効果があることが特徴です。
また、歯茎が弱っている方は研磨剤で炎症が起こる恐れがあるため、歯茎に刺激を与えないように、研磨剤の入っていないものや少ないタイプを選ぶようにしましょう。
歯周病の予防や進行を食い止める成分が配合されている歯磨き粉を選び、正しくブラッシングを行いましょう。

〇美白(ホワイトニング)
歯を磨いても色がくすんで見えるのは、コーヒーやお茶などの色素が付いてしまうのが原因のひとつです。
このような着色汚れを「ステイン」と表記することもあります。
黄ばみを目立たなくするには、歯の表面に付着した汚れと着色を落とす必要があるため、美白を目的として歯磨き剤を選ぶ際には歯垢やステインの除去効果があるものを選びます。
また、白さを保つためには歯のコーティングを行い、汚れと色素を付着しにくくすることも大切となります。

〇知覚過敏
歯の表面にあるエナメル質が溶けてしまったり削られたりすると、象牙質がむき出しになります。
そこに冷たいものや熱いもの・歯磨きなどの刺激が加わることで痛みを引き起こすのが、知覚過敏の症状です。
原因としては、必要以上に強い力による歯磨き、研磨剤の多い歯磨き粉のつけすぎ、加齢による歯茎下がり、ホワイトニング、虫歯、歯周病などさまざまです。

このような知覚過敏の症状がある際に使用する歯磨き剤は、神経を保護し、しみる痛みを軽減する成分が含まれていることが特徴です。

〇口臭予防
ほとんどの場合、正しいお口のケアが習慣づいていないことで、歯肉線や舌の奥で口臭の原因となるバクテリアが発生し、蓄積することで口臭となります。これらの口臭の原因となる歯垢や汚れの除去を主目的とする歯磨き剤です。
このタイプの歯磨き剤には、口臭の原因菌を殺菌する成分が含まれています。代表的な殺菌剤には、「イソプロピルメチルフェノール」や「塩化セチルピリジニウム」などがあります。

3-2.成分

〇フッ素
むし歯予防に欠かせない成分に「フッ素」があります。
フッ素は「モノフルオロリン酸ナトリウム」「フッ化ナトリウム」といったフッ素化合物のかたちで配合されており、虫歯菌の酸によって溶け出したリンやカルシウムを歯に戻す「再石灰化」を促進し、歯の質を向上させて溶けにくい歯にしてくれます。
でき始めのむし歯は、歯垢から出る酸によって、歯からカルシウムなどのミネラルが溶け出し、表面からわずかに内側の部分の密度が低くなっています。 フッ素は、口の中で酸が発生するのを抑え、歯へのミネラルの補給を促し、健康な状態に修復(再石灰化)します。
同時に、虫歯菌が酸を作る働きを抑制。さらに、フッ素は歯や骨を丈夫にするためにも重要な成分です。
また、フッ素で再石灰化した歯は、酸に強くなるため、むし歯になりにくくなります。

〇研磨剤
細かい研磨剤粒子が配合された歯磨き粉は、コーヒーやタバコによる着色汚れや、プラークを落としやすくする効果があります。歯磨き粉のパッケージの成分表記に「炭酸ナトリウム」や「ケイ素」系のものが表記されていたら、それが研磨剤の役割を果たしています。
研磨剤配合の歯磨き剤は、使いすぎると歯や歯茎を傷める原因にもなります。
研磨剤によって、エナメル質の表面にできてしまった細かい傷には、汚れが詰まり、さらに汚れて見えるという悪循環になる可能性もあります。
よって研磨剤配合の歯磨き剤は、1日1回あるいは週末のみの利用とするなど間隔を空けて使うのがおすすめです。
なお、歯磨き粉の成分表示では「清掃剤」と書かれている場合もあります。

〇発泡剤
発泡剤は「ラウリル硫酸ナトリウム」という成分がほとんどで、泡立ちをよくしてプラークや着色汚れを落とす手助けのために配合されています。
泡立てることで磨いた後の爽快感が得られるうえに、有効成分が口内に行き渡りやすくなるのが特徴です。しかし、泡立ちを感じると、しっかり磨けたと錯覚しやすいため短時間で歯磨きを終わらせてしまいやすく、きちんと磨けていなくても磨けた気になってしまう場合があるので、磨き残しが多くなってしまう可能性があります。そのため磨き残さないブラッシングを意識することが重要。
そして、泡立ちが強いと口をしっかりゆすぎたくなってしまい、歯磨き粉に入っていたフッ素が歯に取り込まれずに流れてしまって虫歯予防にならなくなってしまうことがデメリットとして挙げられます。
このようなことを防ぐために、大人の適量は2cmほどなので、1cm程度に減らして泡立ちを抑えることも有効です。

3-3.歯磨き剤のタイプ

〇ペースト
歯磨き粉の種類の中でも、一般的に慣れ親しんだタイプです。さまざまなメーカーから数多くリリースされているので、自分に合ったものを選びやすいのが嬉しいポイント。研磨剤や発泡剤が入っているものが多いので、着色汚れやホワイトニング効果も期待できます。また、液が垂れたりすることが少ないので、子どもにおすすめです。

〇ジェル
ジェルタイプの特徴は、研磨剤と発泡剤が含まれていないことです。歯茎が敏感になっている方やインプラント治療を受けた方はジェルタイプがおすすめ。また、口のすみずみまでジェルが行き渡りやすいので、磨き残しが減ります。加えて、飛び散ることが少ないため電動歯ブラシにも最適です。

〇液体
液体歯磨きは適量を口に含んですすいだ後に、歯ブラシでブラッシングをします。液体歯磨きは、歯の表面を傷つけにくいのが魅力。さらに、歯ブラシが入りきらない歯のすき間にも有効成分がしっかりと行き渡りやすくなっています。一方、液体歯磨きと似ている洗口液は、口腔内をすすぐ目的のものなのでブラッシングは行いません。外出先で歯磨きができないときなどに便利です。

歯磨き粉と言っても様々な種類のものがあり、それぞれ症状の改善や予防に特化した成分が配合されています。
また自然の素材を用いて作られた安心な歯磨き粉もたくさんあるので、選ぶのに苦労することも。どんな効果や質を歯磨き粉に期待するかで選ぶ製品が変わってきますから、しっかり成分と効能をチェックしてください。