子どもの歯並び

2023.10.20

こんにちは、お口の学校です。

子どもの歯が生えてくると、歯の生え方や歯並びが気になる親御様もいらっしゃるのではないでしょうか。歯並びがあまり良くない場合には、矯正を始める時期や費用も気になると思います。そんな親御様のために、今回は子どもの歯並びについてご紹介いたします。

〈子供の歯並びを悪くする原因〉

子どもの歯並びを悪くする原因として考えられることは大きく分けて3つあります。生え始めはまっすぐ生えていた歯も、毎日無意識にしてしまっている癖が関係しているといわれています。

  • (1) 幼少期の癖

発育中の子どもの骨格はとても柔らかく、ちょっとした癖が歯並びを悪くする原因になってしまいます。幼少期の指しゃぶりや爪を噛むなどの癖は、歯並びを悪くする原因の1つです。特に指しゃぶりで長時間口の中に指を入れていると、上の前歯は前に、下の前歯は後ろ側に力が加わり続けます。力が加わっている状態が長く続くと、前歯の噛み合わせがずれて出っ歯や開咬(かいこう)という状態になってしまうこともあります。3歳くらいまではあまり心配する必要はないのですが、いつまでも指しゃぶりの癖が直らない場合は注意しましょう。また、舌を突き出す癖や頰杖をつく癖も少しずつ噛み合わせが悪くなる原因です。頬杖をつくと顎が常に片方に押されている状態になるので、左右的に顎の位置が歪んでしまう原因となります。同じ方向を向いてうつ伏せで寝ることも頬杖と同じように、枕で顎が押されている状態が長時間続くので、だんだんと顎の位置がずれていってしまいます。口呼吸は唇で歯を押さえる力がなくなってしまうため出っ歯や歯並びが崩れる恐れがあり、よく噛まずに食べることは顎の発達が遅れ、受け口や歯並びがガタガタになる恐れがあります。日常的にさりげなくやっていることではあるかもしれませんが、ご自身のお子様がやっていないか注意してみてください。

  • (2) 乳歯の異常

生えてきた乳歯に異常がある場合も、生え変わりで生えてくる永久歯の歯並びに影響するといわれています。

●乳歯の虫歯

根元まで虫歯になってしまうと、上手く生え変わることができず、永久歯に影響がでてしまいます。

●乳歯の早期喪失

永久歯が生えてくる準備が整っていない時期に乳歯が無くなってしまうと、永久歯が見当違いの方向へ生えてしまうことがあります。通常永久歯は、乳歯が生えていた場所に入れ替わりで生えてくるものですが、乳歯が無い状態で永久歯が作られると永久歯の場所が不安定になってしまうからです。

●癒合歯(ゆごうし)

2本の歯がくっついて1本になってしまっている歯のことを指します。子供の1~3%が癒合歯を持っているといわれています。癒合歯は通常よりも虫歯になりやすく、更には永久歯の本数が足りなくなっていることや、生え変わりのときに上手く抜けないことが多いので、癒合歯を確認した場合は歯科医院への相談が必須です。

●過剰歯(かじょうし)

通常、乳歯は全部で20本ですが、まれに21本目、22本目の歯が生えてくることがあります。これは過剰歯と呼び、歯科医院への相談が必須となります。過剰歯が永久歯の邪魔をし、永久歯が出てこないことや歯並びが悪くなる恐れがあります。

  • (3) 遺伝

遺伝によって、もともと歯並びがあまり良くない場合があります。歯の大きさや骨格、顎の大きさや形は親御様に似る場合が多いので、親御様と同じように歯並びが悪くなりやすいです。親御様の噛み合わせが悪い場合には歯並びが悪くなる可能性が高いので、早めの段階で歯科医院を受診するようにしましょう。

〈子供の歯並びが悪いデメリット〉

歯並びが悪いと、お子様の体に少なからず悪影響があります。主なデメリットは以下の5つです。

  • (1) 虫歯、歯周病になりやすい

歯並びが悪いと歯磨きが十分にできないせいで、虫歯や歯周病にかかりやすくなり、若いうちにほとんどの歯を失ってしまうことになるかもしれません。ちなみに、虫歯治療では銀歯を使った治療は安価ですが金属アレルギーなどデメリットが多いです。一方でセラミックで治療を行うとメリットは多いですが、費用としては1本で10万円以上かかります。また、歯がなくなったところにインプラントを埋め込むとなると1本につき35~50万円かかります。こうして考えると、トータルの治療費としては子どもの頃に歯並びを治しておく方が、金銭的にもメリットがあるといえます。

  • (2) 笑顔に自信がなくなる

笑うときに一番目立つのは、やはり口元ではないでしょうか。歯並びが悪いと、そのことばかり気になってしまい、上手に笑えなくなり性格まで暗くなってしまうことが多いのです。最近は大人になってから歯並びを矯正する人も増えています。

  • (3) 滑舌が悪くなることがある

厳密に言うと、歯並びそのものが滑舌に影響するというわけではありません。滑舌を悪くする原因としては舌の位置や唇の動きが関係しており、歯並びが舌や唇の動きを邪魔してしまうと滑舌に影響が出てしまいます。上手に話せないと、友達とのお喋りも楽しくなくなってしまい、内気な性格になってしまう恐れがあります。

  • (4) 歯ぎしりをする可能性が上がる

歯の噛み合わせがうまくいっていないと、歯ぎしりが起こりやすくなるといわれています。歯ぎしりは眠りが浅いときに歯を擦り合わせていたり、強く噛み締めたりしてしまう現象のことです。無意識下で起こっているので、簡単に辞められません。さらに、歯ぎしりをすると歯の負担も大きくなります。結果、歯が削れてしまったり、力がかかりすぎて顎関節症になったりするリスクが上がります。

  • (5) 身体が歪んだり、肩凝りになったりする

上の歯と下の歯の噛み合わせがずれていると、間違った部分で噛んでしまいます。そうすると顎に力が入りすぎてしまい、筋肉が強張ります。筋肉のバランスが悪くなっていき、身体の中心が歪んでしまったり、肩が凝ったりする原因になります。また、筋肉の緊張による食いしばりがひどい場合は歯ぎしりをしやすくなり、歯が割れる原因となります。

では、どのような歯並びの場合は矯正が必要となるのでしょうか。ここからは矯正が必要な歯並びの例と、子どもの頃から矯正をする大切さをお伝えしていきます。

〈子どもの歯並びで矯正が必要な例〉

●叢生(乱ぐい歯・八重歯・ガタガタの歯並び)

叢生(そうせい)とは、大きい歯があったり顎が小さかったりして歯の生えるスペースが狭くなってしまっている状態で、歯が重なって生えてデコボコになってしまっている歯並びのことをいいます。硬いものを噛まないせいで顎の筋肉が退化してしまい、近年多く見られる症例です。喋るときの発音や顔の印象にも大きく影響しますし、噛み合わせが悪くなり歯や消化器に負担をかけてしまう事にもなります。歯が重なっている状態なので、磨き残しが増えやすく虫歯になりやすいので、将来的に歯周病にかかって通常よりも若くして歯を失ってしまうリスクが考えられます。

●開咬(かいこう)

開咬とは、別名オープンバイトといい、前歯がしっかり噛み合わない状態のことをいいます。こちらも成人してから虫歯や歯周病に悩まされるケースが多い歯並びの1つです。開咬の問題は、前歯で食べ物を噛み切れなくなることです。さらに、奥歯に必要以上の負担がかかり、歯や顎の骨を痛めてしまい将来的に奥歯を壊してしまいやすい状態にもなります。

●受け口

簡単にいうと、下の顎が上の顎よりも前に出ていることをいいます。医学的には反対咬合(はんたいこうごう)と言われており、上下の歯の噛み合わせの位置が正常な状態の反対になってしまっているのです。受け口は顔の印象にも大きく影響し、しゃくれた顔つきになってしまいます。歯に問題がある場合と、顎に問題がある場合に分けられます。原因としては骨格や顎の成長具合、幼少期の癖などが関係しています。重度になってしまうと、外科手術を併用した矯正治療が必要な場合もあります。

●出っ歯

出っ歯とは、上顎の前歯全体が突出している状態のことをいいます。医学的には上顎前突(じょうがくぜんとつ)と言われており、具体的には下記の状態になっていることをいいます。

・前歯の先端が唇の間から見えてしまう

・横から見ると前歯が突き出している

・歯茎が前にでている

原因としては主に遺伝的なもの、舌の癖などによるものなどが複合的に関係して発症すると考えられています。唇が閉じにくくなり、口の中が乾燥しやすいのが特徴です。唾液の分泌量が少なくなり、虫歯や歯周病になりやすく口臭の原因にもなります。

●すきっ歯

すきっ歯は医学的に空隙歯列(くうげきしれつ)と言います。歯と歯の間に隙間があることで、特に上顎の前歯に隙間がある場合には正中離開(せいちゅうりかい)といいます。乳歯のすきっ歯については心配する必要はありません。永久歯に生え変わるときに必要な隙間のせいで、すきっ歯に見えてしまっていることが多いです。しかし、唇と歯茎をつなぐ靭帯(上唇小帯:じょうしんしょうたい)が前歯のほうまで食い込んでしまっている場合、外科手術をしなければいつまでもすきっ歯のままの可能性があります。気になる方は一度歯科医院に相談することをおすすめします。

〈子どもの歯並びの治し方〉

噛み合わせや顎の発達状態には個人差があり、歯並びを治すのに最適な方法は歯科医院での診断が必要になりますが、悪い歯並びは放置しておくという選択肢はありません。歯並びが悪ければ、見た目の問題もありお子様に心理的な影響が出ることもあります。また、一番大きな問題はお口の大切な機能である咀嚼の障害があることです。きちんと噛めなければ、成長期の子供に大きな影響が出てしまいます。また、歯磨きがうまくできずに歯周病や虫歯のリスクも高まります。

●床矯正(拡大装置を使用し、顎の骨を広げる)

子どもの歯並びが悪いのは顎が小さいことが原因で、歯が重なって生えてしまったり歯並びが悪くなったりしていることもあります。この場合顎を広げる装置を装着し、顎の成長をサポートしながら永久歯がキレイに生えてくるように場所をつくってあげます。固定式の装置と取り外しが可能な装置があります。一概には言えませんが、小児歯科の先生はこの床矯正を好まれることが多いようです。

〈費用〉

装置は1つ3万円~6万円です。片方の顎の矯正にかかる治療費総額は15万円、上下だと30万円程かかります。子どものうちに矯正をすることで、大人に比べて治療期間が短く済み、治療費の負担も軽くなります。

●ブラケット(ワイヤー)を使用した矯正

最も一般的な矯正です。ワイヤーを歯に固定し、正しい噛み合せになるように力を加えていくことで、ねじれて生えている歯をまっすぐに揃えていきます。幅広いタイプの不正咬合治療に取り入れられています。矯正歯科の先生はブラケットをメインで用いる矯正治療をされることが多いそうです。矯正は歯並びが悪いことに気付いたタイミングで始めるのがおすすめです。大人になってからもブラケットを使用した矯正は可能ですが、矯正期間が長くかかるうえ抜歯をしなければならない場合もあり、子どもの頃に矯正を始めるのに比べると仕上がりの完成度も劣ります。

〈費用〉

小児矯正に関しては1期治療と2期治療に分けるのかという問題もあるので数値で出しにくいですが、成人矯正と比較した小児矯正とすると25~40万くらいになります。ただしその場合は、永久歯に生え変わってからの補正として後で40万程度(合わせて成人矯正と同じくらいの料金)かかる可能性があります。ちなみに、成人の治療費は全国平均で80万~100万円だといわれています。歯科医院によってはカウンセリングを無料でしてくれるところもあるので、矯正を考えている方は早めに相談し治療プランを立てるのが良いでしょう。

大切なお子様の歯並びはどうか、まずは親御様の目で確かめてあげてください。歯並びに影響がでる悪い癖は無いかどうか、日頃からチェックしてあげることも大切です。見た目にコンプレックスを抱いたりすることで、性格にまで影響を及ぼす可能性もあります。歯並びは大人になる前の成長過程で直していくことが大切です。