歯周病にまつわる様々な病気・症状~肺炎~

2020.06.19

歯周病はさまざまな病気を引き起こすことで知られていますが、その1つが肺炎と言われています。
厚生労働省が2018年に調査した「人口動態統計月報年計(概数)」によると日本人の死亡原因で6.9%を占めるのが肺炎、2.8%を占めるのが誤嚥性肺炎です。
この記事では歯周病がなぜ肺炎を誘発するのかから適切な予防法まで詳しく解説します。
厚生労働省調査
参考資料:厚生労働省「人口動態統計月報年計(概数)」

1. 歯周病の影響が大きい肺炎、誤嚥性肺炎とは?

歯周病の影響が大きいのが肺炎の1つの種類である誤嚥性肺炎です。人間が物を飲み込むことを嚥下(えんげ)、口から食道に入るべきものが誤って気管に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)と言います。
この誤嚥が原因で食べ物や唾液、胃液などと一緒に細菌を気道に誤って吸引してしまい発症するのが誤嚥性肺炎なのです。
肺炎の典型的な症状として発熱、咳、痰などがありますが、特に高齢者が誤嚥性肺炎を起こした場合このような症状が見受けられず受診が遅れることがあるとされます。

・食欲がなく体重が減り、体力が落ちてきた
・食事に時間がかかり、よくむせる
・喉がガラガラしていて唾液が飲み込めない
・1日中うつらうつらしている

典型的な症状ではないものの、高齢者の方でこのような症状がもしあれば誤嚥性肺炎が疑われるため、念のため受診するのが望ましいでしょう。
受診すると医師の診察で肺の聴診をして、その後胸部のレントゲン撮影やCT検査、血液検査、喀痰検査、酸素飽和度の測定などが行われ、誤嚥性肺炎であるかどうかが診断されます。

治療方法はほとんどの場合が入院をし、抗生物質の点滴を行うのです。
酸素飽和度が低い場合には酸素吸入も行われます。
ここで嚥下指導とともに口腔ケアの徹底を伝えられる場合が多いのですが、なぜ誤嚥性肺炎の予防として口腔ケアが必要なのか次の項目でご紹介します。

2.歯周病と誤嚥性肺炎の関係性について

2001年に日本歯科医学会誌で発表された「要介護高齢者に対する口腔衛生の誤嚥性肺炎予防効果に関する研究」では、特別養護老人ホームへの入居者366名に対して口腔ケアと肺炎の発症率の関係について調査が行われました。
その結果口腔ケアを行った入居者と行わない入居者では2年間の発熱率(37.8度以上の発熱が7日以上続いた場合を指す)が30%、肺炎発症率は8%の差があることがわかったのです。

どうしてこのような結果となったのでしょうか。

それは口腔が肺の入り口であることと、誤嚥性肺炎の原因である細菌にとって適切な温度と湿度が保たれていることの2つが理由で、細菌の数が多くなればその分誤嚥性肺炎のリスクが高まるからです。
誤嚥性肺炎を起こす細菌の多くが嫌気性菌(酸素のない所で発育する菌)であること、歯周病原細菌は酸素の少ない歯肉の中で増殖する嫌気性菌であることから歯周病と誤嚥性肺炎の関連性は明らかと言えるでしょう。

(参考資料:要介護高齢者に対する口腔衛生の誤嚥性肺炎予防効果に関する研究)

3.誤嚥性肺炎の予防のため、今日からできる口腔ケアとは?

歯周病は40才前後に発症することが多いので、誤嚥性肺炎を引き起こさないためにもこの年代から継続的に意識した口腔ケアを行うことをおすすめします。

口腔内が最も酸性化している食後すぐに口腔ケアを行うのが理想的で、歯や歯茎を傷つけないよう適切な力で歯みがきを行うようにします。
また磨き残しの多い3つの部分である歯と歯の間、歯と歯茎の間、奥歯のみぞの部分は特に注意して丁寧なブラッシングを心がけましょう。

歯ブラシは「やや柔らかい」ものを選ぶのがコツで裏から見て毛先が見えたり、広がっていたりしたら新しいものに交換します。(ただし、磨く力などによって個人差があります。)

また電動歯ブラシはしっかり握ってブラシを歯から少し浮かすようにして使うとうまく磨くことができるようです。

高齢者の方の場合は歯科衛生士の方のアドバイスのもと、歯ブラシでは届かないところを磨くためのさまざまな補助具を用いて口腔ケアを行うと、より衛生的で心地よい口腔ケアを行うことができます。
補助具は糸ようじ、スポンジブラシ、舌ブラシなど種類が様々なためそれぞれの適切な使用方法を覚えることが大切です。

歯周病にならないための口腔ケアについて更に詳しく知りたい方は、特定非営利活動法人日本歯周病学会の「歯周病Q&A」も参考にしてみてはいかがでしょうか。

(参考:特定非営利活動法人日本歯周病学会「歯周病Q&A)
http://www.perio.jp/qa/prevention/

4.誤嚥性肺炎にならない、また悪化させないために

誤嚥性肺炎にかかりにくい、また悪化させないためには日々の口腔ケアが重要なのがおわかりいただけたのではないでしょうか。
長く口腔ケアを楽しみながら続けるためにも、自分に合った道具を揃えることや口腔ケアの方法やタイミングを見直してみることをおすすめします。

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