「歯ぎしり」はどうして起こる? 〜ストレスだけではない「歯ぎしり」の原因とその治療法〜

2023.06.02

「切歯扼腕(せっしやくわん)」という言葉があります。「切歯」は歯ぎしりをすること。「扼腕」は激しく意気込んで自分の一方の手で他方の腕を押さえること。


また、「ごまめの歯ぎしり」という言葉もありますね。「ごまめ」はカタクチイワシのことで、

実力のない者が、いたずらに苛立ったり悔しがったりすることをたとえたものです。

こうした昔からの言葉に見られるように、「歯ぎしり」には長い歴史があるのですね。

「歯ぎしり」の症状はどんなもの?

歯ぎしりは、眠っている間にギシギシ、キリキリという凄い音を立て、ご本人は気づかないまま毎晩のように繰り返されます。専門的には「プラキシズム(口腔内悪習慣)」と呼ばれるれっきとした病気です。具体的には、歯を激しく擦り合わせたり、噛みしめたりしているために、「歯の咬みあう面がすり減ってしまう」「歯肉に負担をかける」「歯に亀裂が入る」「詰め物が取れる・割れる」「歯がしみる」「知覚過敏を進行させる」「顎関節症のリスクを高める」など、様々な悪影響が出てきます。「頭痛・肩こり」の原因にもなると言われています。

「歯ぎしり」の原因は?→「メンタル」ではなく「デンタル」!

では、そんな恐ろしい「歯ぎしり」の原因とは何なのでしょうか。

(1)従来言われてきた「原因」は「メンタル」

以前は、「歯ぎしり」は「精神的なストレスが原因」と、もっぱらメンタル面から引き起こされると考えられてきました。

つまり、仕事や人間関係などで何らかのストレスをかかえていると、睡眠中に上下の歯を思いっきり食いしばったり すり合わせたりすると言われていたのですが、それは原因のなかでもほんの一部に過ぎないということがわかってきたのです。

(2)原因は「デンタル」のストレスにあります!

では、本当の原因は、というと、ほとんど9割以上が「噛み合わせの不具合、不正咬合」によるものと考えられます。その意味で歯ぎしりとはまさに、お口が発している「危険信号」なのです。

人間の噛み合わせというのは非常に精巧にできていて、歯周病などでその調和が崩れると、ご本人は気づかずとも、口の中には大きなストレスがかかってきます。歯並びというのは、もともとは上下左右隙間なくピッタリ噛みあうようにできていますが、1か所でもそれがズレてくると、連鎖的にすべての歯の噛み合わせに影響が出てしまうのです。そうなると、常に歯と歯が正しく噛みあわない状態になりますから、顎の骨の位置までズレてきて、目に見えないサルグツワをかまされたような状態がずっと続くことになります。歯ぎしりは、これを少しでも解消しようと、無意識のうちに歯と歯をこすり合わせてしまうのです。

まさに、原因はメンタルではなくデンタルにあります。

では、「歯ぎしり」の治療法は?

大切なのは、歯科医院で治療を受けて、正しい噛み合わせをつくることです。それができれば歯ぎしりも自然に解消されます。

歯科医院によっては、歯ぎしり予防のための専用マウスピースをすすめることもあるようですが、それでは根本の原因である噛み合わせの治療にはなりません。

噛み合わせの不具合によるストレスを改善しようと、無意識におこる歯ぎしり。無意識だけに、ご本人はなかなか気づきにくいというのも困った点ですね。一緒に寝ているご家族がお気づきになるケースが多いようですが、気になる方は、早めに専門の歯科医師の診察を受けるようにしましょう。噛み合わせの治療については、専門の歯科医師でなければなかなか難しいようです。