良い歯医者さんの選び方⑤
矯正治療のための良い小児歯科を選ぶポイント②
1.矯正治療中の引っ越し
子どもの矯正治療は経過を観察しながら歯と顎を理想的な位置に誘導するため、治療期間が長くなる傾向があります。そのため、治療期間中に引っ越しが決まったという状況も少なくはないかと思います。転院が必要になった場合は出来るだけ早い段階で担当医師に相談しましょう。また、矯正治療は自費診療のため転院の際の返金内容が異なります。費用の一部が返金される場合や、未装着分の装置代のみ返金される場合、契約内容によっては返金されない場合もあります。矯正治療は年単位の治療になるので、トラブルを避けるためにも転勤や引っ越しの可能性がある方は、治療の継続法や治療費の問題などについても必ず事前に確認しておきましょう。
2.矯正歯科と小児歯科の違い
矯正治療を専門に扱う矯正歯科には高度な矯正治療技術があると考えて良いでしょう。大人の矯正治療であれば、専門の矯正歯科で治療を受けるようおすすめできます。ただし、子どもの矯正治療の場合には虫歯予防なども並行して行わなければならないので、歯の生え変わりをはじめとした状況の変化を確認してもらうことも大切です。お口の中の状況や成長に合わせて適したタイミングで矯正治療をするために、小児歯科で矯正治療を受けた方が良いという考えもあります。小児矯正を受けられる歯医者さんは「歯科・一般歯科」と「矯正専門歯科」の2つに分かれます。それぞれの特徴についてご紹介いたします。
●歯科・一般歯科とは
歯科・一般歯科とは、虫歯や歯周病などの一般的な歯科治療と矯正治療、小児歯科やインプラントなど、様々な治療を行っている歯医者さんです。小さな子どもからご年配の方まで幅広い年齢層に対応しています。
〈歯科・一般歯科で治療を受けるメリット〉
・矯正治療中に並行して虫歯や歯周病治療ができる
・駅から近い、休日・夜間診療など立地や通院の条件が整っているところが多い
・矯正治療が終わった後もかかりつけの歯医者さんとして長く通院ができる
〈歯科・一般歯科で治療を受けるデメリット〉
・矯正治療に特化していないため、担当歯科医師の矯正治療の実績が分かりにくい
・矯正歯科医師が非常勤の場合、予約が取りにくい
・矯正歯科医師が非常勤の場合、装置が外れた、痛みがあるなどの緊急時に対応してもらえない場合がある
・担当制でない場合、矯正担当医師が急に変わることがある
●矯正専門歯科とは
矯正専門歯科医院とは矯正治療を専門に行う歯医者さんのことです。矯正治療の専門的な知識や技術を有した認定医師、または専門医師、指導医師が所属している事が多いです。しかし矯正治療を専門としているため、虫歯や歯周病などの一般歯科治療は行っていないことが多いです。信頼性は高いのですが、治療によっては別の歯医者さんと併用して進める場合があります。認定医師、専門医師とは歯科医師免許を取得後、さらに学会や団体の認定医師や専門医師の審査・基準に合格した歯科医師のことで、より矯正治療に関する知識や技術の専門性が高いです。歯科医師の他に、歯科衛生士や受付スタッフも矯正治療の知識や経験が豊富である可能性が高い歯医者さんです。
〈矯正専門医院のメリット〉
・矯正治療に精通している認定医師や専門医師が在籍している可能性が高い
・矯正治療の症例数が多く技術力が高い
・装置の故障や急な痛みにも対応できる
・矯正治療に必要な設備が充実している
〈矯正専門医院のデメリット〉
・虫歯や歯周病など矯正治療以外の診療科目に対応していない
・矯正治療のための抜歯で別の歯医者さんに通院が必要な可能性がある
・歯科・一般歯科と比較して歯医者さんの数が少ない
3.通院しやすい環境か
矯正治療中は1ヶ月に約1~2回のペースで通院し、歯の動きに合わせて装置を調整します。しかし、矯正治療中には装置の破損や急な痛みなどのトラブルで、急遽受診が必要になる場合もあります。学校や自宅から通いやすい距離に歯医者さんがあれば急なトラブルにも対応してもらえるので、通院しやすい環境であるかどうかは歯医者さんを選ぶポイントとなるでしょう。
4.矯正治療に必要な設備や機械は揃っているか
矯正歯科医師は顎の骨の成長・発育を熟知した上で精密検査を行い、治療計画を立てます。お子様にとって最も効果的な矯正装置を選択するためには正確な検査結果が不可欠です。検査不足が原因で診断ミスや矯正治療の失敗にも繋がるため、事前の検査は正確に行わなければなりません。そのためには、矯正治療に必要な設備や機械が揃っていることが重要です。可能であれば下記の5つ全ての検査を行う歯医者さんでの治療をおすすめします。
・顔と口の中の写真撮影
・石こう模型(※1)による歯型のチェック
・パノラマX線写真(※2)の撮影
・頭部X線規格写真(セファログラム※3)の撮影
・その他(身体の成長状態のチェック、顎関節の動き、お口周りの筋機能の検査、噛み合わせの検査など)
※1 石こう模型
※2 パノラマX線写真
※3 セファログラム
歯医者さんによって設置されている機械や検査内容は異なり、検査は多岐にわたるため使用する機械も多くなります。どの機械を使用して、どのような検査を行うのか分かりにくいと思いますので、詳細は歯科医師やスタッフに確認してみると良いでしょう。
お子様の歯の健康を保つためには、虫歯がなくても年に数回は歯医者さんへ行かなくてはなりません。整った歯並びや噛み合わせは虫歯や歯周病のリスクを下げるだけでなく、噛む、飲み込む、発音するなどのお口の機能や、呼吸器などの健康面にもプラスに働くことが考えられます。費用面だけで矯正歯科を選ばず、担当歯科医師の人柄や経験、通院するためのアクセスの良さなども考慮して選ぶ必要があります。歯科医師が異なれば、診断内容や治療方針も異なる場合がありますので、なるべく複数の矯正歯科でカウンセリングを受けてみましょう。不安を抱えたまま診療や治療を受けることのないよう、またお子様も親御様も安心して長く通院できるような相性のよい歯医者さんと出会えるよう、焦らず慎重に探してくださいね。