歯茎ケアで歯周病予防!

2023.08.21

こんにちは、お口の学校です。

人間は年を重ねていくと歯茎も衰え後退してしまいます。さらに、歯と歯茎の間に歯垢(プラーク)が蓄積すると、歯垢(プラーク)の中の細菌が原因で炎症が起きてしまいます。繰り返し炎症が起きると、歯茎を健康に保つために必要なコラーゲンが減少してしまいます。歯茎は、約60%がコラーゲンからできています。歯周病になると、この歯茎のコラーゲンが分解され、歯と歯茎の間の隙間が広がり、そこにできた歯周ポケットに歯周病菌が増殖しさらに歯周病を悪化させる、という悪循環が起こります。また、歯茎が下がるため、歯と歯の間が空いてスカスカになったように見えます。尚、歯茎は加齢によっても「下がる」「やせる」といった症状が出てきます。加齢によりコラーゲンが減少し、お肌にハリが無くなるのと同じような影響が歯茎にも出てくるのです。体内のコラーゲンは加齢に伴い衰えて減少し、25歳をピークに40代で約半分になり、60代では3分の1程になるといわれています。一般的に20代の歯茎に比べると、50代ではなんと約6mmも下がってしまうというデータもあります。

〈歯茎の構造について〉

まず、歯茎の構造と働きについて簡単にご説明しましょう。歯茎は、外界と接している「上皮組織」と、その内側の「結合組織」からなり、肌と同じような2層構造をしています。「上皮組織」には、歯茎を守る働きがあります。健康な歯茎は「上皮組織」の歯茎細胞同士が、細胞接着因子によってしっかりと結合しており、歯周病原因子(歯周病菌や歯周病菌が出す毒素)が内部に侵入しにくく抵抗力の高い状態にあります。しかしながら衰えてきた歯茎では、「上皮組織」の歯茎細胞同士の結合が緩み、歯周病への抵抗力が低い状態になっています。「結合組織」は歯茎のハリを保ち、歯を支える働きを担っています。結合組織の約60%はコラーゲンでできていて、歯茎細胞がコラーゲンを作っています。このコラーゲンが歯茎にハリを与え、歯を支えるのに寄与しています。また、歯茎が下がる主な原因は炎症による歯槽骨の破壊ですが、加齢に伴いコラーゲンの合成が低下することも歯茎が下がってくる一つの要因になりえます。健康な歯茎であれば、コラーゲンの「合成」と「分解」を繰り返すことで代謝を調整し、バランスを保っています。ところが、歯周病の発症・進行に伴って、このバランスが崩れると、コラーゲンが減少してしまいます。

〈歯茎ケアのポイント〉

では、歯茎の健康を守るには、どうすれば良いのでしょうか?いくつかポイントを紹介します。

  • (1)日々の歯磨き

毎日の歯磨きをするうえで歯茎もしっかりケアをすることが大切です。歯茎が下がって見えてしまうのは、歯周病によって歯茎が炎症を起こしているためです。通常、歯磨きの際はスクラビング法という歯面に歯ブラシを直角に当てて磨いていく方法をとりますが、歯茎ケアを行う際にはバス法と呼ばれる歯磨きの仕方で歯茎に45度の角度で歯ブラシを当てて、左右に軽く動かしながらケアをしていきます。バス法は歯と歯茎の境目の歯周ポケットに毛先が届く磨き方として適しているといえます。歯周ポケットは歯周病菌が潜んでいる場所です。ここを意識して磨くことによって、歯茎の炎症を鎮めます。この際、少しの出血があっても問題ありません。歯ブラシだけでなく、デンタルフロスを使ってケアする方法もあります。

  • (2)定期的な歯科健診

歯茎の状態は自分ではなかなかわからないものですので、気づいた時にはかなり進行している場合があります。そうなる前に、定期的に歯科医院を受診して歯茎の状態をチェックしてもらいましょう。歯茎の下がりなどは、歯の磨き方に原因がある場合もあります。もちろん、歯周病のチェックも重要です。歯周病は歯茎の健康に深く関わる病気ですが、症状が進むまで、なかなか自覚しにくいという特徴があります。自分は大丈夫と思っていても、もしかしたら歯周病が進行しているかもしれません。そのため、歯科医院で定期的に歯茎の状態をチェックしてもらい、歯石の除去や正しい歯磨きの仕方のアドバイスなどを受けると安心です。少なくとも1年に2~3回は受診するようにしましょう。

  • (3)歯茎の健康に良い毎日の生活習慣

まずは「喫煙」「ストレス」「食生活」に気を配ることから意識してみましょう。

<喫煙>

喫煙はその行為自体、歯周病になるリスクを5倍以上も高め、さらに重症化もしやすくなります。ヘビースモーカーほどそのリスクは高くなる傾向があります。その理由として、タバコに含まれるニコチンなどの有害物質が血管を収縮させたり、タバコの不完全燃焼で生じる一酸化炭素が血中のヘモグロビンと結合したりすることで、歯茎に栄養や酸素が届きにくくなることがあげられます。また、喫煙すると唾液が出にくくなって口内の細菌が増えやすくなるため、歯周病菌が増殖する要因にもなります。その結果、歯周病にかかりやすくなるのです。喫煙している人が歯周病になると、本来起こるはずの歯肉の腫れが見た目上では起こらず、そのため歯周病になっても病気を自覚できず、いつの間にか進行を許してしまうのです。そのため、歯の健康を考えるのであれば、できればタバコは吸わないことをおすすめします。

<ストレス>

ストレスが歯周病に関与することは、以前から指摘されています。過度のストレスは、歯茎の血流量の減少や、唾液分泌の低下などを招きます。その結果、歯周病にかかるリスクが高まると考えられています。また、ストレスは生活リズムの乱れを招き、口内の衛生状態の悪化、喫煙、飲酒などを引き起こし、間接的に歯周病を悪化させるとも考えられています。ストレスの解消においては何か趣味や楽しみを見つけると良いですし、疲労の蓄積を解消するにはゆっくりと入浴することや充分な睡眠を心掛けると良いでしょう。ストレスを溜め込まず、適度にストレス解消することを心掛けましょう。

<食生活>

歯茎の健康を守り、歯周病を防ぐためには、食生活に気を配ることも大切です。栄養バランスが整った食事は、歯周病を含む生活習慣病の予防に欠かせません。また、栄養状態は病気から体を守る免疫機能にも影響を及ぼします。忙しい時などは、麺類や丼などの単品料理を食べることが増えて栄養バランスが偏りがちですが、ごはんや麺などの「主食」、肉や魚などのたんぱく質を含む「主菜」、野菜や海藻などを含む「副菜」を組み合わせた食事を意識して、バランスのとれた規則正しい食生活を目指せると良いでしょう。

歯茎の健康は、日々の生活習慣とも関係があります。歯茎の健康のために良い生活を心がけましょう!

歯茎とコラーゲンの関係

歯は、歯茎の上に出ている歯冠の部分と歯茎に隠れている歯根の部分に分かれます。歯冠部の表面はエナメル質で、ダイヤモンドの硬度を10とすると6~7の硬度で水晶と同じくらいの硬さがあります。エナメル質の内側が象牙質と呼ばれる部分で、エナメル質よりは軟らかくエナメル質が失われると象牙質は擦り減りますが、象牙質は加齢により増加しエナメル質が失われたところに新しく作られることがあります。歯根の部分は表面からセメント質があり、歯の中央部には血管や神経が侵入している歯髄(しずい)があり、象牙質を作り出しています。歯槽骨(しそうこつ)と歯のセメント質の間には歯根膜(しこんまく)という組織が存在し、歯槽骨から歯根を覆うのが歯茎で、歯を支えながら口腔内の異物や食べかすなどが歯槽に進入するのを防いでいます。虫歯は歯の病気で、歯周病は歯の周りの歯骨膜と歯槽骨の病気です。コラーゲンは歯の周りで歯を固定するために様々な働きをしています。歯茎にはコラーゲンが非常に多く存在しています。歯茎は口の中の粘膜で最も強くて厚いものであり、歯でものを噛む時には大きな力がかかります。それを支えるには歯茎は相当強くなければなりません。その強い組織はコラーゲンで作られているのです。歯茎よりももっと直接的に歯を支えているのが歯槽骨です。そして歯槽骨と歯を接着しているのが歯根膜です。歯槽骨は骨ですから、その芯になる部分はコラーゲンです。また歯根膜はコラーゲンが非常に強力な接着剤の役目を果たしている部分です。歯周病は、歯根膜や歯槽骨を溶かすので歯がぐらつき始めやがては抜けてしまう病気です。

歯の土台を作るたんぱく質

歯も歯茎も、骨や筋肉の一部です。健康で強い歯や歯茎を作るためには、必要な栄養素をきちんと摂り、正しい食生活を送ることが大切です。子どものころから、「健康な歯や強くて丈夫な骨を作るために、カルシウムを摂りなさい」と言われ、牛乳や小魚などをたくさん食べてきたという人も多いでしょう。実は、カルシウムだけでは丈夫な骨は作れません。筋状のたんぱく質があって、その筋のあいだにカルシウムが付着することによって、はじめて丈夫な骨が作られるのです。ビルなどの大きな建物は、鉄筋コンクリートで作られています。鉄骨だけ、コンクリートだけではもろいので、鉄筋を入れることで補強しているのです。この鉄筋に当たるのが、たんぱく質です。たんぱく質は、私たちの身体の20%を作る大事な成分です。肌や髪をきれいにするコラーゲンもたんぱく質の一種なので、たんぱく質を多く摂ることで、お口の健康だけでなく美肌や美髪にもつながります。たんぱく質には、動物性と植物性があります。以下は動物性または植物性たんぱく質を多く含む食品の一例です。

動物性たんぱく質は主に肉や魚、卵、牛乳、乳製品などに含まれており、植物性たんぱく質は大豆や小麦、野菜、きのこ類などに含まれています。たんぱく質にも、質の違いがあります。たんぱく質の良し悪しは、アミノ酸スコアと呼ばれる基準によって分かります。人間も動物なので、人体には動物性の質のほうがなじみやすいといわれています。ただ、動物性たんぱく質は脂質も多く含むので、悪玉コレステロールが増える可能性があります。大量摂取には気をつけ、脂質の少ない魚介類も合せて摂りましょう。植物性たんぱく質は脂質が低いのですが、アミノ酸の含有量も低いという欠点があります。以下は動物性、植物性たんぱく質別のアミノ酸スコアが高い食品の一例です。

●動物性たんぱく質

牛肉、豚肉、マグロ、サーモン、アジ、いわし、卵、牛乳など

●植物性たんぱく質

白米、小麦粉、大豆、トウモロコシなど

アミノ酸スコアの数値が100に近ければ近い食品ほど、消化によって分解されやすく栄養素として働きやすいといわれています。また、アミノ酸スコアが高い食品ほど、脳の満腹中枢を刺激しやすく、食べ過ぎを防いでくれます。動物性たんぱく質と植物性たんぱく質、どちらにも偏らず、バランスよく食べるように心がけましょう。

歯茎に大切なコラーゲンとビタミンC

健康な歯や歯茎を作るには、カルシウムやたんぱく質の他に、ビタミンを摂ることも大切です。先ほどの鉄筋コンクリートの例で言うならば、ビタミンはたんぱく質の働きをサポートし、カルシウムとたんぱく質をくっつきやすくしてくれる接着剤となります。また、ビタミンAは歯の表面を守るエナメル質を作る働きがあります。ビタミンCが不足していると細菌が粘膜に浸透しやすくなるといわれ、歯の病気の一つである歯周病にかかりやすくなります。歯周病菌によって侵された歯茎はコラーゲン繊維が破壊されてしまった状態です。この状態で放置してしまうと歯がぐらつき始め、歯を支えてくれていた歯槽骨まで溶け始めてしまい、やがて大切な歯は抜け落ちてしまうことになります。壊れたコラーゲン繊維を元に戻すには、ビタミンCが重要です。ビタミンCはコラーゲンを作り出すことができ、別名アスコルビン酸とも呼ばれる水溶性のビタミンです。そのため水に溶けやすいのが特徴です。食事でビタミンCを多く含む果物や野菜を摂取する際は、熱をあまり加えないような工夫が必要です。ビタミンCは非常にデリケートな栄養素であり熱に弱いため、ビタミンCを多く含んだ食品でも熱を加えすぎるとビタミンCが半減してしまいます。場合によってはほとんど無くなるといっても過言ではありません。また、ビタミンCは水に溶ける成分なので生野菜でもカットしてから水洗いをすると流れ出てしまいます。さらに、ビタミンCは摂り溜めができません。朝たくさん食べたから夜まで大丈夫、というものではありません。朝たっぷり摂ったビタミンCは、一時的に体の中で余った状態になり、余った分は尿と一緒に排泄されてしまいます。一日の必要量をできるだけ分散して摂ることをお勧めします。ビタミンCは余れば排泄されるので過剰症の心配はありません。毎食ごとにビタミンCを摂ることを意識するようにしましょう。ビタミンCを多く含む食品にはこんなものがあります。

野菜なら赤・緑・黄ピーマンやパセリ、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツなどに多く含まれます。果物ならレモンやゆず、キウイフルーツ、柿、いちごなどに多く含まれます。その他ではじゃがいもやさつまいもも量が摂りやすく、ビタミンCを摂取しやすい食品です。ビタミンはサプリで補給している人も多いかもしれませんが、ぜひ食品からも取り入れるようにしましょう。

歯周病は、歯周病菌が歯と歯茎の隙間に入り込み、歯を支える歯槽骨を溶かしてしまいます。その結果、歯がぐらついて、最悪の場合は抜けてしまうのです。食べ残しや歯垢などが歯磨きできちんと落とされないことでネバネバした歯垢(プラーク)となり、歯周病菌を発生させます。しかし、歯周病の進行にはもともとの骨の丈夫さも無縁ではありません。たんぱく質やビタミンをきちんと摂り、丈夫な歯や骨を作って歯周病の進行を抑えるようにしましょう。また、歯茎を形成するうえでコラーゲンは大切です。そのコラーゲンを作り出すことができるのがビタミンCであり、ビタミンCを多く含む食材を上手に摂取することが大事です。正しい歯茎ケアの仕方を身につけ、歯茎ケアで歯周病予防をしましょう!