歯周病にまつわる様々な病気・症状~アルツハイマー病~

2021.11.04

超高齢化社会の我が国では、2020年現在、認知症患者数が600万人を超えており、今後もその数は増加し、2025年には675万~730万人が認知症になると厚労省は予測しています。
これは65才以上の高齢者の5人にひとりの割合ですから、認知症はとても身近な問題です。

認知症の67.6%を占めるのがアルツハイマー型と考えられています。アルツハイマー型以外には、血管性認知症、内分泌・代謝性中毒性疾患などが認知症の原因とされていますが、やはり圧倒的に多いのはアルツハイマー型です。
厚労省でも、将来に備えて認知症治療薬の開発や、介護職の増強などの計画を立てていますが、やはり私たちとしては自分自身の問題として、なんとか日頃から効果的な認知症予防対策を講じたいものですね。

1.アルツハイマー病とは

・アルツハイマー病は、アミロイドβ(ベータ)というたんぱく質が脳内に蓄積され、二十数年を経て発症すると考えられています。
※<アミロイドβとは>
アミロイドβとは、アルツハイマー型認知症患者の脳内老人班の主成分です。

若年性アルツハイマーもありますが、歳をとるとアルツハイマー病になりやすいのはなぜでしょうか?
 脳の神経細胞には、β(ベータ)セクレターゼ、γ(ガンマ)セクレターゼ、α(アルファ)セクレターゼという酵素が存在しています。正常な状態のときはα(アルファ)とγ(ガンマ)が一緒に動いていて、アミロイドβ(ベータ)を生成しないので毒性も出ません。。
 しかし歳をとってくるとα(アルファ)セクレターゼの力が落ちてきて、β(ベータ)セクレターゼとγ(ガンマ)セクレターゼがアミロイド前駆タンパク質(APP)を切断してしまうのです。切断時に残るペプチド断片部分(アミロイドβペプチド)が、アルツハイマー病の原因と考えられており、そのセクレターゼの力関係の逆転が、どうやら40歳代くらいから始まるようなのです。
 アミロイドβ(ベータ)は20年くらいかけて蓄積しますから、60歳代になるとアルツハイマー病を発症しやすくなるのでしょう。

2.歯周病とアルツハイマー型認知症の関係

歯周病は、成人のおよそ70%が罹患しているとよくいわれます。罹患率は40代以降で圧倒的に多くなります。
従来から歯周病は認知症の危険因子あるいは増悪因子であるという疫学研究報告がありましたが、最近さらに、両者の因果関係が分子レベルで明らかにされつつあります。

名古屋市立大学 道川誠教授らによる研究「歯周病で加速するアルツハイマー病分子病態と認知機能障害」や、九州大学の研究チームによる研究などで、その因果関係が続々と解明されています。

九州大学の研究チームによると、マウスにヒトの歯周病の原因菌であるジンジバリス菌(Pg菌)を投与したところ、アルツハイマー型認知症の原因物質であるタンパク質「アミロイドβ(ベータ)」が、投与していないマウスに比べて約10倍検出され、記憶力も低下したということです。

重度歯周病の罹患と認知機能低下が正相関することが報告され、アルツハイマー型認知症への関与がさらに注目を集めています。

3.歯周病予防でアルツハイマー型認知症も予防しましょう!

認知症を直接予防する方法や治療薬の開発が望まれますが、それはまだ今後の課題です。

しかし、歯周病の治療・口腔ケアによってアルツハイマー型認知症の発症予防や症状の進行を抑えることが期待できます。
まずは、私たちは今できる認知症予防のひとつとしても、日ごろから歯周病の治療や口腔ケアにしっかり取り組みましょう。
歯周病ではないかな?歯磨きがうまくできない!と思われる方はぜひ、歯科医にご相談し、日々適切な歯磨きを行いましょう。