歯周病にまつわる様々な病気・症状~糖尿病~

2020.04.28
歯周病と糖尿病の関係

歯周病は歯周病細菌の感染によって発症する病気です。
口の中にはおよそ500種類の細菌が存在しており、プラーク1mgには約1億の細菌がいると言われています。

そして、歯周病になると体におこる様々な病気に影響を及ぼすことが、近年の研究によって明らかになりました。

厚生労働省が平成29年に行った「国民健康・栄養調査」では、日本人の歯の健康状況において「何でも噛んで食べることができる」人が60代で76.2%、糖尿病が強く疑われる人の割合は20才以上の男性で18.1%、女性で10.5%という結果が出ました。

以前から糖尿病の患者さんには歯周病が多く見られましたが、個人で糖尿病の症状に幅があること、歯周病自体が罹患率の高い病気であったことからなかなかこの2つの病気の因果関係がつかめずにいたのです。

しかし調査研究が進み歯周病と糖尿病の因果関係について少しずつ解明されてきました。

今回は、糖尿病と歯周病の関係について詳しく説明します。

1.歯周病が全身に及ぼす影響

始めに、歯周病になることで全身の健康にはどのような影響があるのでしょうか?
臓器ごとに見て行きましょう。

①脳→脳梗塞・認知症

歯周病菌が歯茎から血液に入り全身をめぐることで動脈硬化を起こし、脳梗塞を引き起こすのです。

②肺→誤嚥性肺炎

歯周病菌が唾液などに混ざり、下気道に入り込んで肺に炎症を引き起こします。

③心臓→心疾患

歯周組織の炎症と排出される物質が心疾患の原因となります。

④子宮→早産

歯周病により生理活性物質の分泌に影響を及ぼし、子宮が収縮して早産を引き起こすのです。
また妊娠すると増加する女性ホルモンが歯周病菌の栄養素となり歯周病悪化の原因となります。

⑤すい臓→糖尿病

歯周病が糖尿病を憎悪させ、糖尿病が悪化すると歯周病が進行しやすくなるという悪循環に陥ります。

これらのことから、歯周病が全身に与える影響の1つとして糖尿病があるというのを覚えておきましょう。

2.歯周病が糖尿病に与える影響とその原因

ではなぜ歯肉の炎症である歯周病が糖尿病に影響を及ぼすのでしょうか。
糖尿病と歯周病は一見あまり関係のない病気のように思えますが、実は深く関係しています。

糖尿病とは、インスリンの作用不足により慢性高血糖をきたす病気です。

そして最近では、歯周病で誘発される細菌が原因で、インスリンの機能が発揮できなくなることが明らかになりました。

歯周病と糖尿病の関わり
(参考:8020推進財団「からだの健康は歯と歯ぐきから」)

歯周病になると、歯と歯茎の間に溝ができ、そこに細菌を含んだ歯垢が溜まります。
歯垢が付着すると、歯茎は血液が溜まり炎症を起こします。
炎症を起こした歯茎は刺激に弱いので、固いものを食べたり歯磨きしたりをするとすぐに出血します。
口の中で出血すると、毒素を含んだ細菌を知らぬ間に飲み込んでしまうのです。

このような状態の歯周ポケットからは炎症に関連した化学物質が血管を経由して体中に放出されてしまうのです。
この化学物質が体の中で血糖値を下げる働きのインスリンを効きにくくする(インスリン抵抗性)ため、歯周病になると糖尿病が進行しやすくなると言えます。

3.歯周病にならないためには

歯周病が糖尿病に与える影響やその原因がわかったところで、このように全身や他の病気にも影響が大きい歯周病にかからないようにするためにはどうすれば良いのでしょうか。
対策を4つ、ご紹介します。

①プラークコントロールを心がける

プラーク=歯垢で細菌の塊なので、この増殖を抑えて歯周病を予防するという方法です。
プラークコントロールなら歯みがきでもうしているから大丈夫という方もいらっしゃるかもしれませんが、実は歯垢は歯みがきだけでは完全に除去することはできません。
歯垢を除去するためには歯科医の治療や薬の力が必要な場合があるので、プラークコントロールを適切に行うためには日頃の歯みがき+定期的な歯科受診が欠かせないことを覚えておいてください。

②正しい歯みがきを行うよう心掛ける

一人一人歯の生え方は違うので適する歯みがきの方法も異なりますが、一般的に良いとされる方法をご紹介します。

・1本ずつ磨く

・歯ブラシの毛先を歯に直角にあて、小刻みに動かして磨く

の2つです。

また歯みがきをする時はその効果を減らさないためにも、歯ブラシの毛先が開いていないか事前にチェックすることが大切です。
毎食後30分~1時間ほどを目安に行うのが理想的と言えるでしょう。

③よく噛んで食べる

よく噛むということは唾液の分泌を促し、細菌を洗い流してくれるため歯周病だけでなく口臭や虫歯の予防にもつながります。
また噛むことで満腹中枢が刺激されるため、糖尿病の予防もできるのです。

④食生活を見直す

歯周病の原因菌である歯垢は糖質をエサに増殖するため、糖質の多い食生活を送っている場合は控えるようにしましょう。
糖質を制限するのは糖尿病予防にも効果的です。

4.糖尿病にならない、または悪化させないために

今までの内容から、歯周病と糖尿病は深くかかわっている病気同士ということがおわかりいただけたのではないでしょうか。
糖尿病の方が歯周病になると、その症状がよりひどくなりやすいことがわかっています。

これは糖尿病の方は傷ついた組織を修復したり、傷を治したりする力が弱まっているため歯周病が悪化すると治そうとする力が追い付かないことが原因と考えられているのです。
そのため前述した4つの対策方法で歯周病予防と口腔ケアを適切に行うことは、糖尿病を悪化させないことにもつながると言えます。

歯周病になった口の中には手のひらと同じサイズの炎症が存在すると言われています。
ですが、歯周病は痛みを感じづらいので、自分ではなかなか程度が掴めません。
糖尿病にならないためにも、毎日の口腔ケアで歯周病を予防することが大切です。

歯周病と糖尿病はお互い悪い影響を与え合う関係だからこそ、この2つの病気のかかわりについて正確に理解し、一緒にきちんと治療をすることを心がけましょう。