手足口病は大人もかかる?

2023.11.20

こんにちは、お口の学校です。

唇や口の中に発疹ができて口内炎かなと思っていたら、手足にも発疹が出てきた…なんて話を聞いたこと、もしくは体験したことはありませんか?それはもしかすると、手足口病かもしれません。手足口病は子どもの頃に流行る感染症のため、耳にしたことがある方は多いかもしれませんが具体的にどのような症状が出て、大人にも感染するものなのかはわからない方も多いのではないでしょうか。3大夏風邪の1つでもある手足口病は、主に子どもがかかる夏風邪として知られていますが、実は大人がかかることもあるのです。大人が感染した場合は重篤化する場合もあるので注意が必要です。今回は手足口病の症状や対処法・予防法についてご紹介いたします。

手足口病とは

3大夏風邪の1つである手足口病はウイルス性の感染症のひとつで、原因ウイルスはエンテロウイルスやコクサッキーウイルスです。これらのウイルスには複数の種類があり、主にコクサッキーウイルスA6、A16、エンテロウイルス71が原因となります。手足口病は手・足・口の中に痛みをともなう2~3mm程の発疹が現れ、この発疹が水泡化することもあります。口の中にできた発疹や水泡は口内炎と同じような症状で、水泡がつぶれた後は痛みで食事や飲み物を受け付けられなくなることがあり、脱水症状も引き起こす可能性がありますので注意が必要です。口に発疹ができた場合は口内炎だと勘違いされることも多く、流行する季節に口内炎ができた場合は経過観察するとともに、手足に発疹がないかも確認しましょう。早期発見と注意することで感染拡大を防止できますし、重症化する前に対処できます。手足口病は感染してから数日間は何も症状が表れない潜伏期間が2日~7日間ほど続き、潜伏期間中はウイルスが体内で増殖を繰り返しています。潜伏期間中は一般的には感染しないといわれていますが、その後急性期を迎え発症すると一気に感染能力が高まります。発症すると約3割の確率で発熱をともないますが、子どもが感染した場合は高熱が長く続くことはほとんどありません。腹痛や下痢に加えて発熱や鼻水などの風邪に似た症状を伴うこともありますが、その症状の大半は約1週間前後で治ります。しかし、髄膜炎や脳炎などの合併症を引き起こすこともありますので、感染の際は注意深く見守る必要があります。治癒後1か月~2か月後に手足の爪が剥がれることもありますが、新しい爪が生えてきますので特に処置は必要ありません。症状が治まってもウイルスは2週間~4週間ほど便の中に排出されますので、感染拡大を防止する対策が必要です。手足口病は、免疫力がまだ少ない幼児期に感染することが多いですが、そのウイルスに免疫を持たない場合大人も感染します。特に大人が感染した場合は重症化するケースが多いです。初期症状は風邪のような、倦怠感や関節痛、頭痛や喉の痛みを感じ始め、その後手足や口に発疹が出始めます。大人の場合も子どもと同様に、喉の腫れ、口内炎、手のひらや足の裏の発疹、水ぶくれの症状が現れます。最近の傾向では手足口以外にも、お尻や膝、肘にも症状が出るようになりました。手足口病に大人が感染すると、子どもに比べ症状が重く出やすい傾向があり、発疹は子どもに比べて強く表れ痛みも強くなります。足裏に多く症状が出ると、歩行が困難になるほどの痛みを伴うケースがあります。また、大人の場合はインフルエンザにかかる前のような全身倦怠感と悪寒、関節痛や筋肉痛などの症状や嘔吐・下痢、手足のしびれのような症状が出たり、高熱が何日か続いたりすることもあります。発症後の痛みが治るまでには10日ほどかかり、水ぶくれが完全に消えるには子どもの約2倍の期間、2~3週間程度が必要です。

手足口病の感染経路

手足口病の主な感染経路は、くしゃみ・咳による飛沫感染、ウイルスの付着した手が触れて起こる接触感染、便に含まれるウイルスが呼吸などによって体内に入ることによる糞口感染などです。ウイルスの潜伏期間は3日から1週間程度となっています。

  • (1)飛沫感染

手足口病に感染した人が咳やくしゃみをすることで、空気中に飛沫したウイルスを他の人が吸い込むことで感染します。

  • (2)接触感染

子どもに多いのは接触感染で、幼稚園や保育施設などでお友達と遊ぶ際、子ども同士の距離が近いことによる濃厚な接触で感染します。指をしゃぶった手でおもちゃを触ったり、手を繋いだりすると他の人に感染します。感染力が強いウイルスなので、幼稚園や保育園などで集団感染することがあります。

(3)糞口感染

大人が手足口病に感染する経路の多くは、子どもが感染しおむつ替えなどの時に便から感染するケースが多いです。手足口病のウイルスは長期間便からウイルスが排出されるため、オムツ替えやトイレの手伝いをする場面では十分気を付ける必要があります。

また、唾液のついた衣類からうつることもあります。通常の洗濯でもウイルスを防ぐことが可能ですので、洗濯はこまめに日に当てて乾かしましょう。子どもがいなくても、体調が悪くて免疫力が低下していると外出先で感染することもありますので、日頃から手洗い・うがいを欠かさずに行いましょう。

手足口病の対処法

口の中の水泡は痛みを伴うため、うどんやゼリーなど喉越しのよい食べ物やオレンジジュースなど刺激の多いものは避け、お水やお茶で水分を摂取します。熱い・しょっぱい・酸っぱい・辛いものは刺激があり、痛みの原因になりますので控えましょう。痛くて食べられない場合は脱水症状になる可能性がありますので、経口補水液などで水分を補給しましょう。口の中の乾燥や尿量の減少が見られた際は、脱水症状を引き起こしている可能性があるので医療機関で場合によっては点滴による治療が必要です。

●子どもが手足口病にかかったときの対処法

手足口病にかかったとしても、症状が普段の生活に影響を及ぼさないようであれば、保育園や学校を休むことは必須ではありません。しかしその基準は施設により異なりますので、まずは保育園・学校に連絡、確認をとりましょう。症状がある場合は集団感染を防ぐため、なるべく登園を控えるようにしましょう。また、まれに髄膜炎や小脳失調症などの重い合併症を引き起こすこともありますので、子どもの症状・様子をよく観察し、頭痛や嘔吐、高熱もしくは発熱が2週間以上続く、トイレに行く頻度が少なく尿量が減っているといった症状があれば、病院に相談しましょう。

●大人が手足口病にかかったときの対処法

手足口病というのは子どもの感染症というイメージが強いですが、ウイルス感染症であるために大人でも感染する場合があります。手足口病の主な原因ウイルスはいくつかの種類があるため、幼少期に感染していない型のウイルスに感染することがあるためです。大人の手足口病は子どもから感染するパターンがほとんどで、感染の場は子どものいる家庭や職場が多いといわれています。手足口病はワクチンがなく、手足口病を治す薬もありません。発疹が痛くてどうしようもない時は痛み止めを飲んだり、発疹に粘膜保護剤の軟膏を塗ったりすることもありますが、高熱が出たときに解熱剤で熱を下げるという応急処置だけで、ウイルスの対処療法はありません。特効薬がないのであれば病院に行っても仕方ないと思われがちですが、まれに重症化するケースもありますので、自己判断の思い込みは危険です。高熱が続いたり、頭痛や嘔吐などが見られたりした場合はすぐに医療機関を受診してください。大人の手足口病の原因はウイルス感染の他に、疲労・免疫力の低下などにも注意が必要です。十分な睡眠と栄養を補給するなど、休息に努めましょう。また、授乳期間中にお母様が感染した場合赤ちゃんにも感染する可能性があります。この場合は発症から1週間を目安に授乳を控え、かかりつけの産婦人科や小児科に相談することをお勧めします。手足口病は、会社への出勤停止を義務づける法律は定まってはおらず、発熱や症状がなくなり体調が回復すれば出勤できますが人から人へ感染する病気ですので、感染を予防する配慮は必須です。こまめな手洗い・うがいと、飛沫感染を防ぐためにマスクを着用し、タオルや食器類の共用を避けることが大切です。手足口病は症状が必ず出るわけではなく、症状が出ないままで経過する場合もあるため、日頃から感染予防をしましょう。また、治癒後も2週間~1か月程度は便や鼻水にウイルスが含まれるため、気を抜かずに感染予防を続けましょう。

手足口病の予防方法

一度かかり回復した後でも、くしゃみや咳、鼻水、便にウイルスが排出されることが長期にわたります。明確な症状が出ず、感染していると気づかないままウイルスを排泄してしまう場合もあります。一般的な病気のように発病者を隔離するという方法は感染対策として有効ではなく、手足口病のワクチンや予防薬などはありません。接触感染や便からのウイルス感染を防ぐことが必要との観点から、手足口病の感染予防対策として挙げられるのは、こまめな手洗い・うがいとマスクの着用、飛沫の付着したもの・排泄物の処理をきちんと行うことです。手足口病に感染しても治療に役立つワクチンや薬がない上に、大人が感染すると症状が強く表れますので、予防対策を強化することが大切です。

●手足口病の子どもを看病する際は、十分に注意

子どもが咳をしているようであれば、室内でもマスクをし、看病した後には必ず手洗い・うがいをすることが大切です。ウイルスは便の中にも出ますので、オムツを交換した後は、いつも以上に手洗いをしっかりします。完治後もウイルスは便の中に排出され続けますので、1か月前後は取扱に注意が必要です。

●正しい方法で手洗いをする

手はウイルスを運ぶ最大の原因ともなりますので、感染防止のためにも手洗いが最も有効的です。手指の衛生を保つためには、まず手に汚れが付着していると消毒薬が浸透しないため、石鹸と流水で手洗いを行います。その際、手のひらだけでなく手の甲や指と指の間、親指をもう片方の手で包み込み揉み洗いを行ってください。指先はもう片方の手のひらで揉み洗いをし、手首まで丁寧に洗い、最後に流水でよくすすぎましょう。

●タオルや食器類を共有しない

初めは清潔なタオルでも、感染した人がそのタオルを使うことでウイルスが付着します。湿ったタオルをそのまま放置するとウイルスは増殖し、別の人がそのタオルを使用した際にウイルスが手に付着します。手を介して口にウイルスが入ると、手足口病に感染し家庭内感染を引き起こします。食器類も共有することで感染しますので、手足口病の感染を予防するためには共有をしないことが大切です。トイレやキッチンのタオルは共用にする家庭は多いと思いますが、感染経路を断つためには個々でタオルを使用しましょう。

●家の中でもマスクで感染予防を

子どもはまだウイルスの怖さを理解できませんので、親御様が手洗いを促しても忘れたり、面倒くさがったりします。その場合はマスクをつけておくと安心です。マスクをつけておくことで、口にウイルスが付着することも防止できますし、子どものくしゃみから飛沫したウイルスを吸い込む可能性も低くなります。

大人が発病した場合、発疹や諸症状を含めて、全体的に子どもよりも重症化しやすい傾向にあります。こまめな手洗いうがい・便器の清掃、マスク着用などを心がけ、家庭内感染を防ぎましょう。また子どもは比較的軽症なケースが多いとはいえ、合併症のリスクもあります。子どもは症状を言語化することが難しいため、普段よりいっそう様子をよく見て、変わったことがあればすぐに病院へ問い合わせてください。また、普段から健康的な生活習慣を心掛け、免疫力を高め感染予防をしましょう!