歯周病にまつわる様々な病気・症状~脂肪肝~

2020.08.03

2017年に厚生労働省によって行われた「患者調査」の概要によると歯周病の患者数は約461万人、肝臓疾患の患者数は34万人という結果が出ました。
歯周病は糖尿病、心筋梗塞などさまざまな生活習慣病との関与が指摘される中、脂肪肝の発症にも関わっていることがわかってきたのです。
(参考:厚生労働省2017年「患者調査」)

この記事では歯周病と脂肪肝の関係性から予防法まで詳しくお伝えします。

1. 脂肪肝とは?

まず歯周病と脂肪肝の関わりの前に、脂肪肝とはそもそもどのような病気なのでしょうか。

脂肪肝とは肝臓に中性脂肪やコレステロールが蓄積した状態を指します。
正常な肝臓でも5%ほどの脂肪を持っているのですが、脂肪肝の状態ではこれが30%以上に増加します。

男性では40才前後、女性では40代以降に多発するのですが、明らかな自覚症状がなく発見しにくいのが特徴です。

脂肪肝は原因により3種類に分類されます。

①アルコール性脂肪肝

アルコールの代謝がうまくいかず、肝臓に中性脂肪が貯まることで引き起こされる脂肪肝です。

②非アルコール性脂肪肝疾患

アルコールやダイエットが原因ではない脂肪肝を言います。

③ダイエット脂肪肝

極端なダイエットが原因で肝臓が体中から脂肪をかき集めてしまうことにより引き起こされる脂肪肝です。

肝臓疾患は脂肪肝から肝炎、肝硬変と進行後に食欲不振、黄疸、腹水などの症状が出て気づく人が多いと言われます。
早期発見するには定期的に検診を受け、肝臓の数値を把握しておくように心がけましょう。

2. 歯周病が脂肪肝に与える影響とは?

では歯周病と脂肪肝とはどのようにかかわっているのでしょうか。

以前下記の記事で、歯周病の原因となる細菌の1つにポルフィロモナス・ジンジバリスという菌があることをご紹介しました。

内部リンク:歯周病にまつわる様々な病気・症状~心臓病~
https://okuchi-gakko.com/shishuubyou-shinzoubyou/

非アルコール性脂肪肝疾患と診断された患者150人と、健康な人60人を対象に口腔内からポルフィロモナス・ジンジバリスが検出されるかどうかを調査したところ、非アルコール性脂肪肝疾患と診断された患者の46.7%からポルフィロモナス・ジンジバリスが検出されました。

これは健康な人からのポルフィロモナス・ジンジバリスの検出が21.7%という結果であることと比較すると2倍以上の数値のため、脂肪肝の進行を促進してしまう要因ではないかと推測されているのです。

また逆に脂肪肝が歯周病を引き起こすのではないかと考えられるデータに非アルコール性脂肪肝炎(脂肪肝より病気が進行した段階)によって歯周病のリスクが2.1〜3.9倍上昇するというものがあります。
こちらはまだ研究段階のようですが、歯周病と脂肪肝に密接なかかわりがあるのは間違いないと言えるでしょう。

3. 歯周病と脂肪肝、両方を予防するための生活習慣とは?

では歯周病と脂肪肝、両方を予防するためにはどのようなことに気をつけて生活するのがよいのでしょうか。
3つご紹介します。

①健康診断で歯と肝臓両方をチェックする

歯と肝臓が今どのような状態にあるかを知ることで、歯周病と脂肪肝両方への対策をしやすくなります。
健康診断を定期的に受けることが大切だと言えるでしょう。

健康診断でわかる肝機能数値は「ALT(GPT)」「AST(GOT)」「γ‐GTP(ガンマ・ジーティーピー)」の3つです。
肝臓の細胞が痛むと、血液中に酵素が流れ出すためALT(GPT)・AST(GOT)の数値が上がります。

またγ-GTPは肝臓や胆管の細胞が死んだ時に血液中に流れ出すため数値が上がるのです。
この3つの値の正常値は次の通りです。

・ALT(GPT)…30IU/L単位以下
・AST(GOT)…30IU/L単位以下
・γ-GTP(正常値)…50IU/L単位以下

この数値を参考に、自分の肝臓が現在どのような状態にあるかをチェックしてみてください。

②アルコールを控える

歯周病と脂肪肝を両方悪化させる要因の1つが過度な飲酒です。

33mlのアルコールを毎日飲むと飲まない人と比較して4.28倍も歯周病にかかりやすくなるというデータや、肝臓の病気から肝臓を守るためには週3~5日の休肝日を設けるのが理想的というデータからも歯周病と脂肪肝を防ぐためにはアルコールを控えるのが望ましいでしょう。

③お茶を飲むようにする

お茶の主成分である「カテキン」はその強い抗菌作用で口腔内を清潔に保ってくれることが知られていますが、非アルコール性脂肪肝疾患の患者が高濃度茶カテキン飲料を3か月にわたり継続的に摂取したところ、肝臓への脂肪蓄積が低減し、肝機能が改善することがわかりました。

脂肪肝が起きる原因の1つに活性酸素が体内に過剰に発生することが挙げられますが、カテキンの抗酸化作用がこれを抑えてくれるのです。
歯周病と脂肪肝を両方予防したい人は、日々の飲み物をお茶に変えてみましょう。

4. まとめ

歯周病と脂肪肝には密接な関係があり、歯周病が脂肪肝を悪化させ、脂肪肝が歯周病のリスクを上げてしまう関係にあることがわかりました。
しかし定期的に歯と肝臓の様子を健康診断でチェックし、都度対策を施していけば両方の病気にかかりにくくすることができます。

健康で元気な生活を送り続けるためにも、生活習慣を意識して整えていきましょう。