歯周病が妊娠・出産にも影響を及ぼす!?

2020.07.21

妊娠中はつわりで食事の回数が不規則になったり、気持ちが悪くて歯みがきをしっかりと行えなかったりと口腔内の衛生状態が悪化する可能性が高くなります。
このことからしっかりと口腔ケアを行った方がよいと認識している妊婦さんは多いと思いますが、一歩進んで歯周病と妊娠・出産には強い関連性があるのはご存知でしょうか。

この記事では歯周病と妊娠・出産に及ぼす影響から妊娠中に望ましい口腔ケアまで詳しくご紹介します。

1. 歯周病が妊娠・出産に及ぼす影響とは?

厚生労働省による「人口動態統計」の調査結果によると、出生率が下がっているにもかかわらず、1950年に2500g未満の低体重児の出生割合は5.1%、1990年では6.3%、2013年には9.6%と増加の一途をたどっています。

この一因を作っているのが歯周病なのです。

NPO法人日本臨床歯周病学会の報告によると、歯周病にかかっている人は歯周病にかかっていない人に比べて7倍も早産や低体重児を出産するリスクが高くなります。
この数字はアルコールやタバコ、感染症などと比較しても非常に高いと言えます。

それではなぜ歯周病が早産や低体重児を出産するリスクを高くするのでしょうか。

まず歯周病が早産を引き起こす仕組みですが、口腔内に歯周病菌が増えると免疫バランスが崩れ「サイトカイン」という情報伝達物質が発生します。
「サイトカイン」が過剰に発生すると歯肉や歯槽骨を破壊する酵素が出やすくなるため歯周病が進行するのですが、妊婦さんの胎内では血中サイトカイン濃度が固まると出産のサインと見なされ、陣痛や子宮収縮が始まってしまうのです。
このため胎内で赤ちゃんが十分に成長しないまま出産を迎え、早産となります。

また歯周病が低体重児を出産するリスクを高くする仕組みですが、歯周病菌が炎症を起こした歯肉の血管から血中、さらには羊水内に入り込み胎児の成長に影響を及ぼすと言われているのです。
生まれてくる赤ちゃんの健康のためにも、妊娠中は歯周病にかからないよう予防することが大切と言えるでしょう。

(参考:厚生労働省「人口動態統計」)
(参考:NPO法人日本臨床歯周病学会「歯周病と妊娠」)

2. 妊娠・出産が歯周病に及ぼす影響とは?

では逆に妊娠・出産が歯周病に及ぼす影響とはどのようなものがあるのでしょうか。

歯周病は炎症が歯肉にとどまっている軽度のものを歯肉炎、炎症が歯根膜や歯槽骨にまで広がる重度のものを歯周炎と言います。
妊娠中は女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が活発になりますが、P.intermedia(プレボテラ・インターメディア)という歯周病菌は、エストロゲンを栄養源として増殖するのです。
またプロゲステロン(黄体ホルモン)は炎症物質を刺激します。

このため妊婦さんは妊娠性歯肉炎にかかりやすくなってしまうのです。

妊娠性歯肉炎の主な症状としては歯肉が赤くなり、歯茎が腫れます。
また歯みがきの時に出血も見られるのです。
体調が優れない時に口腔ケアまで意識するのは大変なことですが、歯周病が悪化しやすい状態にあることは覚えておくようにしましょう。

3. 妊娠中におすすめの口腔ケアの方法

妊娠中は体調やメンタルの不安定さからなかなか口腔ケアに前向きになれないという妊婦さんも多いことでしょう。
そのような時にできる口腔ケアの工夫を5つご紹介します。

①体調が良い時間帯を見つけて歯みがきを行うこと

妊娠中で体調の波がある場合、体調の良い時間帯に歯みがきを行っておくという方法があります。

この場合「食後に必ず歯みがきをしなければならない」というプレッシャーから解放されるので、妊婦さんも少し気が楽になるのではないでしょうか。
気持ちよく歯みがきを行うために歯磨き粉は匂いが気にならないものを選ぶこと、歯ブラシを口に入れるのがストレスにならないように子供用歯ブラシを使用することなども良い工夫と言えるでしょう。

②マウスウォッシュを利用すること

歯みがきが難しくても、マウスウォッシュを利用してうがいならできそうな時があるのではないでしょうか。
種類が多く殺菌効果のあるもの・ないものなど効果別にも選ぶことができるので、においや味が気にならず用途に合うものを準備するのがよいでしょう。

③水分補給をしっかりすること

口腔内を乾燥させると歯周病の原因となる菌が繁殖しやすくなるため、定期的に水分補給を行うようにしましょう。
糖分やカフェインを含まないお茶や白湯を用意し「ちびちび飲む」ことが大切です。

④ガムを噛むこと

これも口腔内の乾燥を防ぐ方法の1つです。
キシリトールの含有率が高く味やにおいが気にならないガムを選びましょう。

⑤安定期に入ったら歯科受診すること

妊婦さんでも安定期に入ると通常の歯科受診が可能になるため、このタイミングで歯垢や歯石を除去してもらうとよいでしょう。
受診時には母子手帳を持参し、受付で妊娠中だと伝えることが必要です。

4. まとめ

歯周病が妊娠中に早産や低体重児の出産リスクを高めてしまうこと、また妊娠で分泌が増加する女性ホルモンの影響で妊婦さんが歯周病になりやすくなることがわかりました。
お母さんと赤ちゃん両方が出産後に健康な生活を送り続けるためにも、妊婦さんは自分にプレッシャーをかけずに楽しみながら口腔ケアをしてみてください。