歯周病にまつわる様々な病気・症状~骨粗鬆症~

2020.07.20
歯周病と骨粗鬆症

一般社団法人骨粗鬆症学会が発表した「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」によると日本国内における骨粗鬆症の患者数は女性980万人、男性が300万人と言われています。
近年研究が進み、骨粗鬆症にかかっている人は歯周病が重症化しやすい傾向にあることがわかりました。

今回は歯周病と骨粗鬆症の関係から予防法までをご紹介します。
(参考:一般社団法人骨粗鬆症学会「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」)

1. 歯周病と骨粗鬆症の関係とは?

歯周病と骨粗鬆症に共通する特徴とは何でしょうか。それは骨にかかわる疾患であるという点です。

骨粗鬆症にかかると全身の骨量(骨全体に含まれるミネラルの量)や骨密度(骨の強度を表す数値)が低下するため骨がもろくなり、骨折などのリスクが高くなります。
また歯周病が進行すると歯槽骨(歯を支える土台の役割を果たす骨)が溶ける骨吸収という事象が起こり、最終的には抜歯しなければいけなくなるのです。

これらのことから歯周病と骨粗鬆症は同じ体の中にある骨を通じてその原因に因果関係があるのではないかと予想され、1960年代より研究が始まり今も続けられています。

2. 骨粗鬆症にかかると歯周病も進行すると言われる理由

骨粗鬆症の患者数を見て、圧倒的に女性の数が多いことが気になった方も多いのではないでしょうか。
これは骨粗鬆症の1つの種類である「閉経後骨粗鬆症」が閉経で卵巣機能が低下し、骨の代謝にかかわるホルモンであるエストロゲンの分泌が低下することにより発症するためです。

エストロゲンの分泌低下は全身の骨密度を低下させるだけではなく、顎骨(がっこつ=あごの骨)や歯槽骨の骨密度も低下させてしまいます。
またエストロゲンは歯周組織の炎症を抑える作用もあるため、分泌低下により歯周ポケット内で炎症性の物質ができやすくなってしまうのです。

このため骨粗鬆症にかかると、歯周病も進行すると言われています。
(参考:稲垣幸司他「口腔から全身を読む!歯周病とからだの健康 歯周病と骨粗鬆症の関係をめぐって」)

3. 歯周病と骨粗鬆症を同時に予防するには?

では歯周病と骨粗鬆症を同時に予防しながら生活するには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。
食事と健康管理の2項目にわけて説明します。

3-1. 食事で気を付けた方がよいこと

歯周病と骨粗鬆症の両方を予防したい時に積極的に摂りたい栄養素は3つです。

①カルシウム
骨と歯の材料となるので歯周病と骨粗鬆症の予防をする上では一番意識して摂取したい栄養素と言えるでしょう。
カルシウムが豊富に含まれる食品は牛乳・乳製品、大豆・大豆製品、緑黄色野菜、小魚、エビ(殻つき)などです。

②ビタミンD・ビタミンK
カルシウムの吸収を助ける働きを持つ栄養素です。
ビタミンDはきくらげ、しらす干し、すじこ、さけ、いわしなどに多く含まれます。
またビタミンKは納豆、しそ、わかめ、春菊、小松菜、ほうれん草、バジルなどに多く含まれるのです。

ビタミンの摂取というとサプリメントに頼りがちな方も多いですが、サプリメントは補助的に活用するのが望ましいことを忘れてはいけません。
同じ栄養素でも食品から摂取した人、栄養補助食品から摂取した人、点滴から摂取した人では異なり、食品以外のものから摂取すると体重低下や体調の悪化が見られる場合が多いのです。

なるべく食事からビタミンを摂れるよう、献立を工夫してみるのがよいでしょう。

③イソフラボン
大豆・大豆製品に豊富に含まれるイソフラボンは人間の体内でエストロゲンに似た働きをします。
閉経後の女性がカルシウムと一緒にイソフラボンを摂取したところ、カルシウムのみを摂取した時より歯槽骨の骨密度の低下や、歯周組織の炎症を抑える効果が高まったという調査結果があるのです。

豆腐、きなこ、油揚げ、納豆などに多く含まれるので、おかずを一品増やすなどの方法で手軽に摂取できるでしょう。

3-2. 健康管理で気を付けた方がよいこと

歯周病と骨粗鬆症の両方を予防するのに健康管理で意識したいことは2つです。

1つめはまず禁煙を試みましょう。
タバコは歯周病と骨粗鬆症両方を悪化させてしまうからです。
喫煙が長年の習慣で取り組みにくいと感じる方は、禁煙外来に相談してみるのもよいでしょう。
費用が13,000円~20,000円ほどかかりますが、歯周病と骨粗鬆症両方を予防するための投資と考えれば決して高くない価格と言えるのではないでしょうか。

2つめは顎骨の骨密度診断が受けられる歯科医院に定期受診し、定期的に骨密度を計ってもらうことです。
今まで骨密度は目視で診断されてきましたが、骨密度測定装置の使用や歯科X線撮影などの新しい手法で数値化できるようになりました。
以前は歯科の分野では悪くなったので治療するという方針が一般的でしたが、予防に積極的に取り組むように変化してきています。

日々の口腔ケアや食事への取り組みももちろん大切ですが、その結果を数値で客観的に把握しておくのも重要な予防と言えるでしょう。

4. まとめ

歯周病と骨粗鬆症は骨を通じて原因に因果関係があると考えられており、日頃の生活から骨を弱らせないよう食事や定期的な歯科受診で予防するのが望ましいとわかりました。
元気で健やかな生活を送り続けるためにも、日頃のちょっとしたケアを心がけていきましょう!