歯周病にまつわる様々な病気・症状~肥満~

2020.06.25

日本人に最も多い感染症は歯周病であると言われています。

2016年に6,278名の男女を対象に厚生労働省が行った「歯科疾患実態調査」の結果によると45才~54才までの対象者の中で49.5%が軽度歯周病の兆候と言える4mm以上の歯周ポケットを持つことがわかりました。
またこの年代は肥満や体重増加が徐々に増え始める年代とも言えるのではないでしょうか。(参考:「平成28年歯科疾患実態調査結果の概要」)

この記事では歯周病と肥満の関係について詳しく解説していきます。

1. 肥満の定義とは?

最初に肥満とはどのように定義づけされているのか見てみましょう。

肥満は太っている状態を意味しますが病気ではありません。
肥満であるかどうかは体脂肪率を表すBMI(Body Mass Index)という体格指数(体重(kg)÷身長(m)の2乗の数値)で示され、WHOの判定基準では30以上が肥満です。

また日本肥満学会では18.5未満を「やせ」、18.5~25.0未満を「普通」、25.0以上を「肥満」としています。
日本人の場合はBMI25を越えると肥満による合併症の発症率が高まるためこのように定義づけされたのです。

自分が肥満であるかどうか定期的に体格指数の式に当てはめて計算してみたり、BMIを表示してくれる体重計を選んだりと工夫して肥満を防ぐよう心がけましょう。

2.歯周病と肥満の関係性について

歯周病と肥満は一方通行な関係ではなく、歯周病は肥満の原因となる可能性が高く、肥満は歯周病の原因となることがわかっています。

2-1.歯周病が肥満の原因となる可能性について

2003年~2012年の9年間に日本大学歯学部教授の川戸貴行先生と公益財団法人ライオン歯科衛生研究所が調査した結果では、歯周ポケットが年1回の検診で6回以上見つかった場合、見つからなかった場合と比較して3倍肥満が多かったのです。
歯周病菌が生み出すLPS(リポ多糖体)という内毒素が分泌する、炎症性サイトカインという物質の影響で脂肪細胞が大きくなるのが肥満の原因となりうるのではないかと予想し研究が進められています。

2-2.肥満が歯周病の原因となる理由について

1998年~2010年にかけて九州大学、アメリカ、ブラジル、フランスの大学、岡山大学が行った研究報告によると、BMIが高いほど歯周病のリスクが上がることがわかりました。
九州大学の調査では、BMIが20未満(やせ、普通)の人を1とすると、BMIが20~24.9(普通)の人は1.7倍、25~29.9(肥満)の人は3.4倍、30以上(肥満)の人は8.6倍も歯周病になるリスクが高まるという結果だったのです。

これは脂肪組織で作られる「TNF-α」という物質が歯を支える骨を溶かし、歯周病を発症、進行させてしまうからだとわかっています。

3.歯周病を防ぐためにも心がけたい肥満予防とは?

摂取エネルギーが消費エネルギーを上回るために起こる単純性肥満が肥満全体の95%を占めます。
これを防ぐためには食生活や運動習慣など、肥満になりやすい生活習慣になっていないか見直すことが重要です。

まず食生活を見直すポイントを4つご紹介します。

①1日3食、規則正しく食べているか
夜間に食べすぎる、間食が多いなどの問題は朝、昼、夜の食事で満足感が得られていないことから起こります。
不規則な食生活を改めるだけで体重や体脂肪率が減少する方は意外に多いのです。

②栄養の偏りがないか
炭水化物、脂質、たんぱく質など必要な栄養素のバランスから献立を見直してみましょう。
栄養素のバランスが良い食事かどうか判断するにはある程度知識も必要ですが、新しいことを覚える楽しみも含めて取り組んでみてはいかがでしょうか。

③よく噛んで食べているか
食べ始めから脳の満腹中枢が働くまでは約20分かかるため、よく噛んでゆっくり食べることが食べすぎを防ぎます。

④アルコールを取り過ぎていないか
お酒には体に必要な栄養素が含まれていないばかりではなく、最近の研究では栄養素のビタミンB1とカリウムを消費してしまうことがわかっています。
肥満予防のためにはほどほどに楽しむのがよいでしょう。

次に運動習慣を見直すポイントです。

①日常活動で体を動かしているか
1日の消費エネルギーのうち50%~70%は基礎代謝、20%~40%は身体活動によるものです。
家事、通勤、子供と遊ぶなどの日常動作において歩く距離を増やす、階段を使うなどの工夫をすれば消費エネルギーを少しずつ増やすことができます。
一度にたくさん運動量を増やそうとせず、「少し」増やすのを繰り返していくのがコツです。

②何か1つ好きな運動を取り入れているか
好きこそ物の上手なれではありませんが、やせるために無理に慣れない運動を取り入れるより経験のあるスポーツや運動を何か1つ行う方が長続きします。

若い時に一生懸命取り組んだ部活を思い出してみたり、憧れていたけれどする機会がなかったスポーツがないか考えてみたりするのもよいでしょう。
もし何も考えつかない場合は「真剣に」ラジオ体操に取り組んでみましょう。
ウォーキングで2~4kcal、ジョギングで5~8 kcalしか消費しないエネルギーが第一・第二体操を通して行うだけで20~30 kcalも消費できるのです。
意識して多少大きめに体を動かすと、より効果的と言えるでしょう。

4.肥満を防ぐためにも心がけたい歯周病予防とは?

歯周病の予防方法というと歯みがきばかりに気が取られがちですが、実は肥満予防と同時にできる歯周病予防の方法というのがあります。

それは「よく噛んで食べる」ことです。

噛めば噛むほど唾液が分泌されるので歯周病、虫歯、口臭予防に効果的で、肥満、糖尿病予防にもつながります。
またよく噛んで食べれば歯周組織を鍛えることにもなるため、間接的にも歯周病予防になるのです。

歯周病と肥満はかかわりが深いからこそ、両方の予防を長く続けていきましょう。