歯周病にまつわる様々な病気・症状~心臓病~

2020.05.29
歯周病予防で健康に!

歯周病は歯垢中の細菌が感染することにより、歯を支える歯周組織に炎症を引き起こす病気の総称です。
歯周病は他の病気の原因になりうることが少しずつわかってきましたが、その1つが心臓病です。

2018年に厚生労働省が行った「人口動態統計月報年計」の結果によると心臓病は日本人の死因の第2位で、15.3%を占めることがわかりました。

今回は、歯周病と心臓病の関係について詳しく解説していきたいと思います。

1.歯周病が心臓病に与える影響とは?

歯周病が心臓病に与える影響について2つの観点からお話します。

1-1.歯周病はどのような心臓病を引き起こすのか

歯周病が発症のリスクを高める心臓病は2種類あります。

いずれも血管が硬く厚くなり、血管の内側が狭まることによって血液の循環が妨げられる動脈硬化が原因で起こる「狭心症」と「心筋梗塞」です。

心臓の筋肉に十分な酸素を含む血液と栄養を送る役割を担っている冠動脈で血管が狭くなると「狭心症」、血管が詰まると「心筋梗塞」が起こります。
動脈硬化を起こした血管から歯周病菌が検出されているとの報告があり、この歯周病菌が血管を狭める作用を促進してしまうため、心臓病のリスクが上がってしまうのです。

1-2.心臓病患者から歯周病菌が検出された割合とは?

では歯周病菌が心臓に到達している心臓病の患者さんは、全体の中でどれくらいの割合を占めるものなのでしょうか。

少し学術的なお話になりますが、右のグラフを参考に説明します。
(参考:財団法人8020推進財団「歯周病対策で健康アップ からだの健康は歯と歯ぐきから」)

ポルフィロモナス・ジンジバリスは慢性的な歯周炎の方からよく検出され他のさまざまな疾患との関連性も指摘されている細菌です。

アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンスは侵襲性歯周炎(歯周組織の急速な破壊を特徴とする歯周炎)の原因菌とされ、白血球の組織を侵食する病毒性の高さを持っています。

トレポネーマ・デンティコーラはタンパク分解酵素と免疫抑制因子を放出し、食道がんとの関連がある可能性を指摘されています。

歯周ポケットが多い人ほど歯周病菌が心臓に到達している割合は増加し、歯周ポケットが4か所以上の心臓病の方ではほぼ3割の方が心臓に歯周病菌が到達しているのです。

歯周病が心臓病のリスクを高めているのが数値ではっきりと示されていると言えますね。

2.心臓病の予防のために覚えておきたい歯周病の受診目安となる症状とは?

今までの記事の内容から、心臓病の予防のためには歯周病にならないよう心がけることが重要だとおわかりいただけたのではないでしょうか。

歯周病になるのを防ぐためには、普段の口腔ケアなどで歯周病対策を行うことが大切ですが、症状が出た時に早めに受診することも必要です。
受診の目安となる、歯周病の疑いがある症状をご紹介します。

・朝起きたときに、口の中がネバネバする。

・歯みがきのときに出血する。

・硬いものが噛みにくい。

・口臭が気になる。

・歯肉がときどき腫れる。

・歯肉が下がって、歯と歯の間に隙間ができてきた。

・歯がグラグラする。

歯周病は初期ではあまり症状が出ないという特徴があります。気になる上記のような症状が出たら、すぐに受診し検査を受けることをおすすめします。
またお住まいの地方自治体によっては歯周病検診を行っている場合があるので、対象年齢や費用をホームページ等で調べ、これらの検診を活用するのもよいと思います。

3.心臓病の予防のために覚えておきたい歯周病のリスクの高い人とは?

歯周病の疑いがあり、早めに受診するためには、自分が歯周病のリスクが高いかどうかをあらかじめ知っておくことも大切です。

次の条件にあてはまる方は、歯周病のリスクが高いと言えます。

・45歳以上の方

・喫煙をする方

・妊娠中の方

・糖尿病にかかっている方

・歯みがきを適切に行えていない方

喫煙は心臓病のリスクも同時に高めてしまうのでうなずけますが、他の条件に当てはまる方も年に1、2回は必ず歯科検診を受診し、歯周病検査と歯石除去を行うことが、予防につながります。

4.心臓病予防、また悪化を防ぐために

心臓に疾患を持つ患者さんの心臓から歯周病菌が一定の割合で検出されたことから、歯周病は心臓病を悪化させる可能性が高い疾患だということがおわかりいただけましたでしょうか。

また心臓病のリスクや悪化を防ぐためにも、歯周病の症状が出ていないか気をつけることや、しっかりとした日々の歯みがき、定期的な歯科受診による経過観察を行うことが必要なのもご理解いただけたことと思います。

歯みがきや日々のご自身の体調を観察することは小さな努力の積み重ねのようなものと言えるかもしれません。

しかし小さなことこそ心臓病のような大きな疾患を予防し、幸せに年齢を重ねることにつながるのをではないでしょうか。
こちらの記事を少しでも参考にしていただき、お口の健康を守って体の健康寿命を延ばし、笑顔で過ごせる日々が長く続くとよいなと思います。